糖尿病は国民病といわれるほどポピュラーな病気です。糖尿病は大きくわけて1型糖尿病と2型糖尿病にわかれます。では1型糖尿病と2型糖尿病で予後や寿命(余命)に違いはあるのでしょうか。
糖尿病と診断された方にとって、インスリン注射はハードルが高い治療法と感じるかもしれません。しかし、近年ではインスリン注射の進歩により、糖尿病患者の寿命に与える影響も大きく変化しています。
インスリン注射は、糖尿病患者さんの寿命を延ばす効果があるのでしょうか?また、インスリン注射を卒業できる可能性は?
適切な血糖コントロールと自己管理が、1型糖尿病患者の余命を延ばす鍵となります。
この記事では1型糖尿病と2型糖尿病の末期症状や平均寿命について解説します。なお、平均余命とは、ある年齢の人たちが残り何年生きられるかを表した期待値になります。一方、平均寿命とは0歳時点での平均余命のことをいいます。
糖尿病と上手に付き合い、健康的な生活を送るためのヒントを探ってみましょう。
糖尿病にかかった場合の寿命
食事を摂るとすい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは血液中の糖を細胞に取り込みやすくすることで血糖値を下げる働きがあります。しかし、糖尿病患者の方はインスリンの分泌力が低下したり、インスリンの働きが悪いため、血糖値が高い状態が続いてしまいます。
糖尿病は発症原因によって次の2つの種類に大別されます。
- 2型糖尿病
- 1型糖尿病
糖尿病を発症すると寿命が短くなるといわれていますが、1型糖尿病と2型糖尿病では平均寿命が異なります。それぞれ以下で詳しく見ていきます。
2型糖尿病
現在、日本の糖尿病患者の約9割が2型糖尿病といわれています。2型糖尿病は体質などの遺伝的要因と食生活などの生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。オックスフォード大学の調査によると、50歳前に糖尿病を発症した場合、平均寿命が10年短縮するといわれています。
糖尿病は高血糖状態が続く病気で、進行するとさまざまな合併症を引き起こすことがあります。特に寿命の長さに影響を与えるリスクの高い合併症には以下のようなものがあります。
- 心筋梗塞
- 糖尿病性腎症
なかでも、心筋梗塞や糖尿病性腎症などは糖尿病患者の寿命に大きく関係する病気です。糖尿病性腎症によって腎臓の機能が低下し、人工透析行うことになった場合、健常者と比較して余命が半分になるといわれています。
1型糖尿病
1型糖尿病の発症原因ははっきりとわかっていませんが、何らかの原因によってインスリンを分泌するすい臓にあるランゲルハンス島のβ細胞が破壊されることで発症するといわれています。したがって1型糖尿病はほとんどインスリンを分泌することができません。
2015年にスコットランドのダンディー大学が2万4,691人の1型糖尿病患者を対象に行った調査によると、20代前半の1型糖尿病患者は健康な人と比べて、平均余命が短くなる傾向があることが明らかになりました。
具体的には、
- 男性で11.1年短い
- 女性で12.9年短い
ということが報告されています。
なお、1975年の米国の調査では1型糖尿病患者の寿命は健常者よりも27年短いと報告されていたため、この40年で1型糖尿病患者の寿命は大幅に改善されていることがわかります。
一方、1型糖尿病の死因は心筋梗塞が最も多いといわれていますが、糖尿病性腎症も寿命に影響があり、男性で8.3年、女性で7.9年の余命が失われるといわれています。
インスリン注射を卒業できる可能性は?
1型糖尿病だけでなく、2型糖尿病でも、重症の方や、インスリン分泌機能が低下している方、長期間高血糖状態が続いている方などは、インスリン治療が必要となります。
しかし、「インスリン注射を始めたら、一生続けなければならない」というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。
確かに、インスリン注射を継続する必要がある方もいらっしゃいますが、1型と2型で異なります。
近年では、早期にインスリン注射を開始し、半年~1年程度で血糖コントロールが改善された場合、インスリン注射を中止できる治療法も一般的になっています。
インスリン治療は、血糖値を下げ、合併症を防ぐために有効な手段ですが、適切なタイミングで開始することで、血糖管理が改善し、すい臓の機能が回復し、インスリン分泌量が増加する患者さんもいます。
- 糖尿病の進行を抑制
- 生活の質を向上
- インスリン注射の必要性を減らす
ことが期待でき、結果的に、インスリン治療を卒業できる方も多くいます。
糖尿病による合併症は、場合によっては命を落とすこともあり、寿命に大きく関係します。インスリン治療は、合併症予防のために適切な血糖管理を長く続けるための手段の一つです。
インスリン治療について不安や疑問がある場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
糖尿病の末期症状
糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると多飲や頻尿、皮膚のかゆみといった高血糖による症状が現れます。2型糖尿病ではこれらの症状が少しずつ、ゆっくりと現れますが、1型糖尿病では突然症状が現れるという違いがあります。
いずれの場合も糖尿病の末期症状には以下のようなものがあります。
- 尿が出にくくなる
- 体のだるさやむくみ
- 視力障害(視力低下や失明など)
- 狭心症や脳卒中
- 腎臓の機能低下(腎不全による人工透析や腎移植など)
- 手足のしびれ
- 手足が化膿しやすくなる(潰瘍や壊疽など)
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末期症状が出てからの余命
末期の症状が現れた場合、平均余命は2型糖尿病と1型糖尿病で変わってきます。
2型糖尿病
50歳前に糖尿病を発症した場合、平均寿命が10年短くなるといわれています。また、健常者と比較して2型糖尿病患者は75歳より前に死亡する確率が2倍程度高くなることがわかっています。
1型糖尿病
1型糖尿病患者の70歳生存率は、男性では健常者が76%に対して1型糖尿病患者は47%、女性の場合で健常者が83%に対して1型糖尿病患者が55%と低くなることがわかっています。
こちらも併せてご参照ください
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糖尿病で余命宣告されたら
糖尿病は合併症を発症すると余命がより短くなります。そのため余命宣告をされたとしても治療を続け、余命がさらに短縮しないようにする必要があります。
糖尿病を発症すると周囲の手助けが必要な場面も出てきます。例えば以下のようなケースでは家族など周りの協力が必要になります。
- バランスのよい食事を用意できない
- 間食をやめられない
- 認知障害があり1人での外出が難しい
- 眼が見えづらくて注射の単位を正確に合わせられない
- 低血糖で倒れた
なお、どのような手助けが必要かは患者の年齢や病状、生活習慣や仕事の有無でも変わります。糖尿病患者の手助けをするためには、家族や周囲の人が糖尿病に対する正しい知識を持つことが重要になります。
特に低血糖で倒れた場合は患者が自分で対応することができません。このような場合に備えて、あらかじめ家族や身近な人に患者自身が対処法を伝えておくことも重要です。
まとめ
1型糖尿病と2型糖尿病の末期症状や平均寿命、インスリン注射を卒業できる可能性や寿命を延ばす効果について説明しました。
糖尿病を発症すると健常者と比べて寿命(平均余命)が短くなるといわれています。
特に心筋梗塞や糖尿病性腎症などの合併症を発症すると寿命への影響が大きくなります。「糖尿病は完治することはできない」といわれていますが、早い段階で糖尿病であることを発見し、血糖コントロールなどの治療を始めることで合併症や症状の悪化を防ぐことにつながります。
少しでもおかしいと思うことがあれば自己判断せず、医師に相談することが大切になります。
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