糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。つまり、なんらかの症状が現れた段階では糖尿病が進行していることになります。自覚症状がないときはそれほど深刻に考えていなかった人も、症状が重くなってくると不安になりますよね。
この記事では、糖尿病が進行するとどのような症状が現れるのか、さらにその治療法について説明します。
糖尿病の主な症状
糖尿病にはいくつか種類がありますが、大きく分けて1型(インスリン欠乏)と2型(インスリン分泌不全・インスリン抵抗性)があります。
食事をするとすい臓からインスリンが分泌され、血糖値を下げます。糖尿病はインスリンの分泌力の低下や作用不足により血液中のブドウ糖の割合が増加してしまう病気ですが、1型糖尿病と2型糖尿病で発症原因と症状の現れ方に違いがあります。
1型糖尿病の主な症状
1型糖尿病は何らかの原因により、すい臓がインスリンをつくれなくなってしまう病気です。
1型糖尿病では以下のような症状が突然現れるという特徴があります。
- 喉が渇く
- 頻尿
- 体重が急激に減少する
- 疲れやすくなり、疲れ方が重い
このほか高血糖によるさまざまな症状が現れることもあります。
1型糖尿病は年齢に関係なく発症し、子供や若い方が発症することもあります。
2型糖尿病の主な症状
2型糖尿病は体質などの遺伝的要素と乱れた食生活などの生活習慣が合わさることで発症するといわれています。
2型糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、症状が進行すると以下のような症状がゆっくりと現れるのが特徴です。
- 喉が渇く
- 疲れやすくなり、疲れ方が重い
- 皮膚の乾燥、かゆみ
- 手足の感覚低下、刺すような痛み
- 感染症にかかりやすい
- 目がかすむ
- 性機能が低下
- 傷が治りにくい
2型糖尿病は過体重の方や40歳以上の方に多い傾向があります。
糖尿病の治療方法
糖尿病の治療法は1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。
1型糖尿病ではインスリンをほとんど分泌できないため、注射器を使ったインスリン療法が第一選択になります。
2型糖尿病の治療法は次の3つになります。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
2型糖尿病の治療は、食事療法と運動療法を行うのが基本です。それでも血糖値が下がらない場合、薬物療法を取り入れます。
高血糖状態が続くとすい臓が疲弊し、インスリンの分泌力が低下したり、合併症を招きます。また、肥満はインスリンの作用を低下させます。そのため、食事療法や運動療法で血糖値をコントロールすることが大切になります。
糖尿病の内服薬には血糖値を下げる効果があるものもあります。ただし、薬物療法を取り入れる際も食事療法や運動療法を続けなければ、薬の効果が十分に発揮できないことがあります。
したがって、薬物療法を取り入れる際も食事療法と運動療法は継続する必要があります。
食事療法
食事療法を行う目的は、食事によるブドウ糖の量をコントロールし、血糖値をコントロールすることです。
糖尿病の食事療法の基本は、1日の食事量を1日に必要なエネルギー量に抑え、栄養バランスの良い食事を摂ることです。1日に必要なエネルギー量は人によって異なるため、主治医と相談して決めることになります。
糖尿病食を作るポイント
食事療法で取り入れる糖尿病食は家庭でも用意することができます。調理ポイントは次のとおりです。
- 食物繊維を多く摂る
- 肉の脂肪を取り除く
- 植物油を使う
- 減塩
血糖値を上げない食べ方
さらに食事療法では、血糖値を上げない食べ方も大切です。食事をするときは以下の点に注意しましょう。
- バランスの取れた食事を1日3回規則正しく摂る
- よく噛んでゆっくり食べる
外食・飲酒・間食の注意点
外食はエネルギーや栄養バランスを調整することが難しくなります。外食や飲酒、間食をする場合は以下の点に注意することが大切です。
- 肉より魚を選ぶ
- 油を多く使っている洋食ではなく、油の少ない和食を選ぶ
- 丼ものよりバランスが良い定食を選ぶ
- 飲酒量は主治医の指示に従う
- 間食は必要エネルギー量の範囲内に収める
「1食ぐらい」「1杯ぐらい」と考えず、医師の指示をしっかり守るようにしてください。
運動療法
運動療法には以下のような効果があります。
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- 血液中のブドウ糖を消費して血糖値を下げる
- インスリンの効果を高める
- 血行がよくして血管の老化を予防する
運動療法は食事療法と組み合わせることで効果を発揮します。運動療法だけを行うと、食欲が増すため、糖尿病が悪化することもあります。
運動療法と食事療法はセットで行うことが大切です。
運動療法は、ウォーキングや軽めのランニング、水泳、水中ウォーキングなどの有酸素運動を中心に行い、無理せず継続することを目標にしてください。
運動量は、少し汗ばむ程度を20分以上、週3~5回、食後1~2時間以内に行うと効果的です。どのような運動をどのくらい行えば良いか人によって異なります。必ず主治医と相談して決めるようにしましょう。なお、運動中に低血糖の症状が現れたら運動を中断してください。
一方、次の項目に該当する人は運動してはいけないとされています。
- 足が壊疽(えそ)している
- 血糖値が高い、血糖コントロールが不良
- 手や足にしびれがある(神経障害)
- 増殖性網膜症がある
- 心筋梗塞や狭心症などの心臓疾患がある
- 糖尿病腎症が進行している
- 感染症を患っている
上記に該当する方は自己判断で運動をしないようにしてください。
薬物療法
糖尿病の薬物療法は、食事療法と運動療法を行っても血糖コントロールが改善されないときに行います。
糖尿病の薬には、インスリンの分泌量を高める薬や、インスリン抵抗性を改善する薬、不足しているインスリンを補う薬などがあり、インスリンの作用不足を改善して血糖値を下げる効果が期待できます。
医師は血糖値だけでなく患者の方の状態や生活環境などを加味して薬の組み合わせを決めます。そのため、医師から指示された薬は、決められた量を決められたタイミングで飲む(または注射する)ようにしてください。
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糖尿病チェック
1型糖尿病と異なり、2型糖尿病は遺伝的要素や生活習慣が原因といわれています。どのような人が糖尿病になりやすいかチェックしましょう。
<糖尿病のなりやすさチェック>
- 家族や親族に糖尿病になった人がいる
- 適正体重を10%以上超えている
- 過食や美食の傾向がある
- 運動不足
- お酒をよく飲む
- ストレスが多い
- 健康診断を受けていない
糖尿病は遺伝的要素があるため、糖尿病歴がある家族がいると糖尿病になりやすいといえます。
また、肥満はインスリン抵抗性を高め、血糖値を上げる原因になります。適正体重から10%以上超えている人は適正体重にするように努めましょう。
なお、適正体重は、「身長(m)×身長(m)×22」で計算できます。
さらに、過食や美食の傾向がある人は血糖値が高くなりがちです。運動不足もインスリンの作用を弱め、血糖値の上昇を招きます。
お酒は高カロリーのため、肥満の原因やインスリン抵抗性を招きます。さらに、お酒をよく飲む人はお酒と一緒に食べ過ぎてしまう傾向があるため、血糖値が上昇することがあります。バランスが良く適正な量の食事を心掛け、運動不足を解消し、肥満がある場合は適正体重に近づけ、お酒はほどほどにすることが大切です。
一方、最近の研究でストレスが糖尿病の発症に深く関わっていることがわかっています。ストレス自体をなくすことはできませんが、自分に合ったストレス解消法を見付けて取り入れるようにしましょう。
2型糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断を受けないでいると血糖値が上がっていることに気付かず、糖尿病であることに気付きません。定期的に健康診断を受け、早期発見につなげることが大切です。
まとめ・糖尿病の症状と治療方法|神経障害の療法について
糖尿病の症状から治療法、糖尿病のなりやすさまでを説明しました。1型糖尿病と2型糖尿病では、発症原因や症状の現れ方、治療法が異なります。
糖尿病は進行すると足の切断や失明など重篤な合併症を招きます。病気を進行させないためにも、医師の指示に従い、治療を継続することが大切です。
監修:医師 坂本貞範