間質性膀胱炎の全て!症状、治療法、あなたが知るべき管理法

2024.06.17

カテゴリー: 糖尿病

間質性膀胱炎

間質性膀胱炎の全て!症状、治療法、あなたが知るべき管理法

排尿は、日常生活において毎日行うことです。行く頻度が多かったり排尿のたびに痛みが伴ったりすると、普段の生活に影響が出ることも多いでしょう。

また、排尿に関する悩みは恥ずかしさなどの理由から周りに相談できず、一人で悩んでいる方もいるかもしれません。

糖尿病の合併症のひとつに、尿路感染症があります。糖を含んだ残尿は細菌にとって繁殖しやすく、男女共に糖尿病に罹患することで尿路感染症のリスクが上昇し、発症しやすくなります。

注意すべき尿路感染症のひとつに膀胱炎がありますが、この記事では中でも「間質性膀胱炎」の治療法や、日常生活での改善策について解説しています。長年の悩みを少しでも解決できるよう、ぜひ参考にしてみてください。

間質性膀胱炎とは?

間質性膀胱炎とは、間質という部分に炎症が起こる病気です。

膀胱は、内側の表面より粘膜層、粘膜下層、筋層という壁で成り立っています。この粘膜下層の部分を間質と呼び、炎症が起こるとさまざまな症状を引き起こします。

膀胱炎の代表的なものを紹介します。

単純性 基礎疾患などの病気がなく、細菌などによる感染によって発症する膀胱炎です。
尿道が短く、膀胱に細菌が入りやすい女性に多く見られます。
ほとんどの膀胱炎は単純性だと言われています。
複雑性 尿路結石や腫瘍などの基礎疾患がある場合に発症する膀胱炎です。
間質性 細菌以外で発症する膀胱炎です。
中高年の女性に発症しやすいと言われていますが、小児や男性も発症することがあります。

それぞれで原因や治療が異なり、適切な治療を行わないと症状が長引くことがあります。

特に間質性は、原因がはっきりと分かっていないため治療が難しく、難治性の病気と言われています。

さらに間質性膀胱炎は、病変の種類によってハンナ型と非ハンナ型の2つのタイプに分けられます。ハンナ病変という特有の粘膜の異常があればハンナ型であり、もう一方のハンナ病変がないものは非ハンナ型(膀胱痛症候群)となります。

ハンナ型は重症度が高く、積極的な治療が必要になることがあります。また、泌尿器科の病気の中で、唯一難病に指定されています。

以下、症状や原因について説明します。

間質性膀胱炎の症状

間質性膀胱炎は、下記のような膀胱障害が現れます。

  • 何度もトイレに行く
  • 膀胱に尿が溜まると膀胱や尿道、膣、外陰部、腰部などに圧迫感や痛みを感じる
  • 尿が溜まると徐々に痛みが出てくる
  • 尿を我慢できない
  • 急な尿意を感じる
  • 排尿すると痛みが軽くなる

症状が似ている病気として、細菌感染による膀胱炎や過活動膀胱、神経因性膀胱などがあります。そのため、診断が難しいことが多いです。

しかし、間質性膀胱炎は良くなったり悪くなったりを繰り返し、徐々に進行していきます。病院で診察してもらう際は上記の病状を医師にしっかりと伝え、早期から適切な治療を受けることが大切です。

間質性膀胱炎の原因

原因ははっきり分かっていません。

しかし、膀胱粘膜の機能障害や免疫反応による異常、尿のなかに含まれる物質による刺激などが原因だと考えられています。

間質性肺炎を診断するために行う検査

症状から膀胱炎が疑われた場合、膀胱に感染があるかどうかをチェックするために尿検査や尿培養検査などを行います。場合によっては血液検査も行い、炎症の有無を確認します。

また、尿細胞診や超音波検査を行い、膀胱がんや膀胱結石などの間質性膀胱炎以外の病気がないかを探ります。

その後、膀胱内の詳しい検査が必要だと判断した場合は、「膀胱水圧拡張術」という内視鏡検査を行います。膀胱水圧拡張術は、膀胱の中に水を入れて膨らませ、膀胱鏡というカメラを挿入して膀胱内の状態を確認する検査です。

間質性肺炎の典型的な所見として点状出血や五月雨様出血、潰瘍などを認めると、診断が確定します。また、検査を行うことで症状が和らぐことがあるため、治療もかねて行われることがあります。

ただし、この検査は膀胱を膨らませるため痛みが伴うことが多いです。麻酔を使って行うため、短期入院が必要になります。

間質性膀胱炎の治療法

間質性膀胱炎は難治性の病気であり、有効な治療法は確立されていません。症状とうまく付き合っていくことが大切になります。

薬物療法

間質性膀胱炎に対する有効な薬はありません。症状に合わせた対症療法を行います。

膀胱に尿が溜まった時の痛みがひどい場合は、鎮痛薬を使用します。その他、症状に合わせて抗アレルギー薬や漢方薬、抗菌薬、抗うつ薬の使用も検討することがあります。

また、2021年よりハンナ型のみ保険適応となった、「膀胱内注入療法」という治療法があります。炎症や痛みを抑える薬を直接膀胱内に注入し、15分後に尿とともに排出します。2週間毎に合計6回の注入が必要にはなりますが、負担が少なく外来で受けられます。

食生活とライフスタイルの変更

カフェイン、アルコール、香辛料、柑橘系の果物、炭酸飲料などは症状に影響します。診療ガイドラインでも食事療法が推奨されており、長期的な自己管理が必要になります。個人差はありますが、できるだけ避けるようにすると症状の悪化が予防できます。

もし摂取しまったという場合は焦らず、水分をしっかりと取りましょう。水分によって尿の色が薄くなると、膀胱への刺激を最小限にできます。

また、生活環境の変化や精神的ストレスなども症状の悪化につながります。ストレスは避けられないことも多いですが、ため込まないように日頃から発散できる方法があるといいでしょう。

膀胱トレーニング

膀胱の容量を多くすることも重要です。我慢することで、膀胱に溜められる尿が多くなり、排尿の間隔が長くなっていきます。

初めは数分程度から行い、我慢する時間を少しずつ増やすと膀胱に溜められる尿量も増えていきます。

ポイントとして、尿を我慢するときは肛門にも力を入れてみるようにしましょう。また、排尿のことばかり考えず、違うことを考えるのもおすすめです。

新しい研究と治療法

研究段階ではありますが、血管内カテーテル治療によって症状が改善した方もいます。間質性膀胱炎を発症すると、膀胱内に異常な血管ができることが分かっています。この血管に対してカテーテル治療を行い、異常な血管を減らすことで症状が改善することがあります。

また、弱いレーザーを当て、ハンナ病変の潰瘍を焼灼するレーザー治療もあります。現段階では、特に重篤な副作用も報告されていません。

今までは膀胱水圧拡張術が主な治療法でしたが、今後、研究が進んでいけば有効な治療法として確立するかもしれません。

間質性膀胱炎と向き合いながら生活するためにすべきこと

間質性膀胱炎の患者数は、そこまで多くありません。そのため、自己管理が難しかったりサポートが受けられる場所が限られたりするため、一人で悩んでいる方もいるでしょう。

しかし、適切な治療や管理が行えれば、うまく付き合いながら一般の人と変わらない生活を送ることも可能です。

日常生活で気をつけること

間質性膀胱炎の多くの患者さんは、特定の食べ物や飲み物の種類によって症状が悪化すると言われています。

そのため、食生活の管理はとても重要になります。しかし、自分が食べられるもの、症状が悪化するものなどの管理が難しいと感じることがあるかもしれません。そのような場合は間質性膀胱炎の患者さんのための暮らしに役立つサイトがあります。食事療法に関する知識やレシピ、お役立ちツールなどもあるため、ぜひ食生活の改善に役立ててはいかがでしょうか。

また、排尿日誌をつけることも大切です。排尿の回数や痛みの有無、飲む水分の量を客観的に確認できれば、悪化する原因を探ることができます。どんなときに症状が悪化するのかを把握し、病気とうまく付き合えるようになると生活の質が高まります。

辛いときに活用すべきサポートやコミュニティ

間質性膀胱炎の患者さんは、自分の悩みを共有できる場所は多くありません。完治できない不安や悪化する症状に悩み、精神的にしんどくなるケースもあります。そのため、同じ病気を抱える人との関わりを通し、自分の症状のつらさやしんどさを共有できる場所が大切です。

例えば、「間質性膀胱炎 友の会」というコミュニティがあります。間質性膀胱炎で悩む方々のために作られ、真剣な悩みから日常の軽い話題までさまざまなことが共有できます。長く付き合っていかなければいけない病気だからこそ一人で悩むのではなく、多くの人と情報交換しながら自分の病状と向き合っていきましょう。

まとめ・生活の質をよりよいものにするために

排尿は毎日のことであり、病気によってトイレに行く回数が増えたり痛み頻回にあったりすると日常生活に影響することも少なくありません。しかし、適切な治療や生活習慣の改善、コミュニティの活用によって、多くの患者さんが症状を和らげることができています。また、新しい治療法の研究も進んでおり、症状が改善する方も多くいます。

つらい症状に悩まされる生活ではなく、病気とうまく付き合いながら生活の質を高められるようにしていきましょう。

 

監修:医師 渡久地 政尚

参考文献

Justin I Friedlander, Barbara Shorter, Robert M Moldwin “Diet and its role in interstitial cystitis/bladder pain syndrome (IC/BPS) and comorbid conditions”PubMed.2012/6
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22233286/

N.Okui, M. Okui and Z. Visintin”Effects of non-ablative vaginal erbium:YAG laser treatment for interstitial cystitis/bladder pain syndrome: a case series (UNICORN-2 study)”|PubMed.2020/10/30
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33124452/

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