2型糖尿病は治るのか?回復は可能だが放置は厳禁|内科専門医師

2021.08.20

カテゴリー: 糖尿病

糖尿病と聞くと、完治するのか不安になりますよね。自然治癒する病気ではなく、継続的なケアが必要です。

医師の指導のもとで運動療法や食事療法をはじめとした治療を行いながら、健康的な生活を送れるよう取り組んでいきましょう。

糖尿病と診断されたら治すことはできるのか、主に2型糖尿病とその治療法について紹介していきます。

2型糖尿病「治る」病気なのでしょうか

まずはじめに、残念ながら糖尿病は「治る」病気ではありません。一度発症したら、継続的に体質改善・生活改善に取り組んでいくことが大切です。

血糖値が正常な値に近づくようコントロールすることで、健康な方と同じような生活を送れる状態を目指すのが糖尿病治療といえます。

まずは糖尿病の種類に応じた治療の基本情報について紹介していきます。

糖尿病の種類は1型と2型に分類される

糖尿病とは、体内のインスリンの量が不足していたり、インスリンの働きが悪くなったりするために、血糖値が高くなってしまう病気です。

糖尿病は大別して「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分類されます。1型と2型はそれぞれ原因が異なるほか、完治についての考え方も異なります。

1型糖尿病は完治の見込みはほぼない

1型糖尿病の原因は、膵臓にあるインスリンを分泌する細胞が免疫により破壊されてしまうことにあります。

この細胞が破壊されてしまうとインスリンが分泌されなくなってしまうため、完治する見込みはほとんどないと考えられています。

多くの場合では子どもや青年が発症しますが、中高年が発症することもあります。

インスリンが分泌されなくなっている症状に対しては、インスリン注射を行って血糖値を下げていく治療が行われます。

このように免疫反応がおきて細胞が破壊されてしまう原因について、詳しいことはまだ明らかになっていません。

2型糖尿病は適切な治療で回復も見込める

糖尿病患者の9割以上が、2型糖尿病に該当するといわれています。

生まれつきインスリンの分泌が不足しているか、あるいはインスリンが作用しにくいことが原因として挙げられ、これに生活習慣などの条件が重なることにより血糖値が上昇してしまうのです。

過食・肥満・運動不足・ストレスなどは、2型糖尿病を発症させやすい生活習慣の一例です。

つまり、いずれの原因で起こる2型糖尿病も、適切な治療によって病状を回復させられる見込みがあり、また初期段階であれば進行を食い止められる可能性があります。

高血糖の放置による合併症リスク

高血糖を数年間にわたり放置することは、さまざまな器官に合併症を引き起こすおそれがあります。眼・神経・肝臓などに問題が生じる病気があるので注意が必要です。

糖尿病は自然治癒することはなく、放置し続けていると症状は次第に悪化してしまうものです。できるだけ早期に医療機関を訪れ、治療を開始することが大切です。

高血糖を放置することで引き起こされやすくなる代表的な病気として、以下が挙げられます。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、「糖尿病3大合併症」といわれています。

視力が低下し、さらに重症化すると失明するおそれもある病気です。しかし、初期段階では自覚症状がほとんど見られません。

中期には目のかすみなどが表れ、末期には飛蚊症や視力の低下が生じます。進行するにつれて緑内障や網膜剥離などを併発するリスクもあるため注意が必要です。早めの治療で進行を抑えることができます。

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害も「糖尿病3大合併症」のひとつです。神経の働きに障害が起こり、体に痛みやしびれが生じたり、体の感覚がなくなったりする症例が見られます。

このように神経の働きに異常が生じると、ほかの病気に気づきにくいので、知らぬ間に合併症が進行している場合があります。

皮膚の感覚が鈍くなっているためケガをしても気づかずに進行して化膿してしまったり、胸痛のない無痛性心筋梗塞を起こしてしまったりするのがその一例です。

糖尿病腎症

糖尿病腎症も「糖尿病3大合併症」のひとつであり、腎機能が低下する病気です。腎機能が低下し続けると慢性腎不全につながるおそれがあり、悪化すると透析療法を受けることになります。

足がむくんだり、体にだるさが感じられたりするのが症状の一例ですが、進行するまで自覚症状はほとんどありません。

さらに悪化すると、腎機能が低下した結果として体内に毒素がたまっていき、頭痛や吐き気、食欲不振などの尿毒症が生じます。

脳梗塞

脳梗塞は、脳内にある血管が詰まりを起こしてしまう病気です。突然に発症し、日常生活にかかわる後遺症が生じるおそれがあります。

命にかかわる可能性もあるため、自覚症状があれば速やかに医療機関を受診しましょう。放置すると後遺症が悪化することも考えられます。

狭心症

狭心症は、心臓の血管が狭くなり胸部に痛みが生じる病気です。心臓に必要な血液が十分に送り届けられていない状態となり、さらに血管が塞がると心筋梗塞にもつながりかねません。

痛みが続くのは数十秒から数分ですが、重症化すると痛みが長く続くようになります。

心筋梗塞

心筋梗塞は、心筋が壊死して胸部に強い痛みが生じる病気です。しかし、糖尿病にかかっている方の場合は痛みの感覚が鈍くなっているため、症状になかなか気づけない傾向があります。

重症化すると命にかかわる病気であり、日本では「三大死因」としてがんや脳卒中とともにその名を挙げられています。

2型糖尿病は治るのか?回復は可能だが放置は厳禁|内科専門医師

2型糖尿病になってしまった場合の治療方法

2型糖尿病と診断されたときは、治療で改善が見込めます。それでは具体的にどのような治療方法を行っていくのでしょうか。また、それぞれの治療方法には、どのような効果が期待されているのでしょうか。

ここでは、医療機関で行われている糖尿病の治療について紹介していきます。

まずは食事療法・運動療法・生活改善

2型糖尿病の治療では、まずは食事療法と運動療法をはじめとした生活習慣の見直しが指導されます。

食事療法とは、食生活をコントロールすることでエネルギー摂取量を適正な範囲内に抑え、同時に栄養バランスを整える措置のことです。

運動療法は、日常生活に運動を習慣化し取り入れることで、適切に血糖を消費して血糖値を下げていくアプローチです。

このほかに、タバコやお酒など生活習慣を見直したり、ストレスを解消したりと、健康的なライフスタイルを維持するための取り組みが行われます。

食事療法のポイント

食事療法は必ず医師や栄養士など専門家の指導のもとで行いましょう。

食事の回数は1日3回、決まった時間に規則正しく指示されたエネルギー量を守って栄養のバランスよく摂取することが大切です。

運動療法のポイント

運動によってかえって体に負担がかかってしまう場合もあるため、自己判断にはリスクが伴います。医師やトレーナーなど専門家の指導のもとで行うことで、高い効果が期待されます。

食事療法・運動療法・生活改善に薬物療法をプラス

食事療法・運動療法・生活改善を継続しても血糖値が下がることがなく回復がみられなかった場合には、さらに薬物療法を追加することになります。

ただし、この場合でも引き続き食事療法・運動療法・生活改善の継続は不可欠です。

また、薬物療法が開始した以降も、体の様子を見ながら薬剤を変更したり、別の薬剤を併用したりと、適切な治療を続けていく必要があります。

2型糖尿病の予防・改善には肥満の解消が効果的

肥満は糖尿病と深い関係があります。肥満により肝臓に脂肪が溜まってくると、肝臓がインスリンに対して反応しにくくなる「インスリン抵抗性」が生じてしまうのです。

インスリン抵抗性が生じた結果、膵臓で生成されるインスリンは過剰分泌され、糖質を細胞に取り込みやすくなり、さらに脂肪が全身にたまってきます。

たまった脂肪は膵臓でインスリンを生むβ細胞の機能に悪影響をおよぼし、これによりインスリンが分泌されにくくなった結果、血糖値が上昇してしまうのです。

肥満を解消し体内に蓄積されている脂肪が減ってくると、肝臓でインスリンが作用しやすくなることから、糖尿病の予防や改善が期待されます。

過剰に蓄積された脂肪を減らすためには、食事のコントロールによりカロリー摂取量を抑えること、そして運動によって筋肉を増やすことが必要です。

食事制限のみでダイエットを行うと、筋肉も減少してしまうため代謝が落ちてしまいます。

その結果として消費エネルギー効率が減少し肝臓に脂肪がつきやすくなったり、リバウンドしたりするおそれがあるため、食事制限と運動は併せて行うことを心がけましょう。

肥満は糖尿病のほかに動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中などの病気のリスクも高める原因となるため、ぜひ改善を目指しましょう。

治療の中断は要注意!

糖尿病は完治が難しいといわれる病気ですが、体質改善や生活習慣の見直しを行うことによって、健康的な生活を送れるようになります。

しかしそれは逆にいうと、治療を中断してしまうと次第に症状が悪化し、合併症を引き起こすおそれにもつながるのです。

できるだけ早い段階で治療を始めるとともに、症状が軽いうちから治療を継続することで、健康的な状態を維持することが大切です。

しかし、高血糖は放置していても、ただちに自覚症状が現れるものではないため、油断して治療をやめてしまう方も少なくありません。

糖尿病は自然治癒することがなく、放置すると症状が悪化していく病気であると、正しく認識することがなによりも大切です。

一時的に体質改善や生活改善の効果を感じられたとしても、自己判断で通院や服薬をストップしたり、食事療法や運動療法を止めたりすることがないよう注意してください。

医師の指示のもとで治療を継続し、健康的な生活を維持していきましょう。

まとめ・2型糖尿病は治るのか?回復は可能だが放置は厳禁

2型糖尿病治療では、体質改善や生活改善を継続して行い、健康的な生活を維持することが不可欠です。放置していても自然治癒することはなく、症状がさらに進行してしまいます。

具体的な治療方法には、主に食事療法と運動療法の継続が挙げられます。その際は、医師や専門家の指導のもとで治療を行い、自己判断で中断することのないよう注意してください。

監修:院長 坂本貞範

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