シックデイ、体調不良時は血糖値が大きく上下するおそれがあるため、適切な対処と過ごし方が求められます。
薬の調整が必要となる場合もあり、誤った自己判断で薬の調整を行った結果、症状を悪化させてしまうことも考えられます。
シックデイの適切な過ごし方を知っておくことは、糖尿病治療において不可欠です。
こちらでは、自身の病状の把握方法や食事の際の注意点などから、シックデイの過ごし方について解説します。
糖尿病のシックデイ対策
糖尿病患者が感染症や病気にかかり、発熱、食欲不振などが生じ体調が悪化しているときのことをシックデイといいます。
特に糖尿病を患い高血糖状態が続いていると、ウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まり、インフルエンザなど感染症にかかりやすくなる側面もあるため、シックデイ対策の正しい理解が求められます。
体調不良時のあらゆる症状は体にとってストレス・負荷をかけるため、身を守るために体内にストレスホルモンが分泌されます。
しかし、この働きは糖尿病患者にとっては悪影響にもなりかねません。インスリン投薬は血糖値を抑えることを目的で糖尿病治療に広く用いられています。
しかし、ストレスホルモンはそのインスリンの働きを抑えてしまう作用があるため、高血糖を引き起こす原因にもなるのです。
また、シックデイには次のようなリスクもあるため、糖尿病の方は特に注意してください。
<糖尿病患者にとってのシックデイのリスク>
● 抵抗力が低いため感染症にかかりやすい
● 病気によるストレスで血糖値が高くなりやすい
● 食事の量が減って低血糖になることがある
このように、シックデイは糖尿病患者にとってさまざまなリスクをはらみます。体調がすぐれない日は、どのように過ごすべきなのでしょうか。
糖尿病のシックデイルール
シックデイの適切な過ごし方をシックデイルールといいます。その主なルールとして、次の5つが挙げられます。
<糖尿病のシックデイルール>
● 保温を徹底して安静にする
● 水分と炭水化物を十分に摂る
● 飲み薬を調整する
● 自己判断でインスリンを中断しない
● 血糖値を測り症状を把握する
糖尿病の進行状況や治療方針は人それぞれ異なるため、ルールの具体的な部分は主治医と相談して決めるようにしてください。
医師の指示がないままに薬の量を調整するなどの自己判断は禁物です。
シックデイの過ごし方で大切なことは、まずはルールを遵守することですが、次のような症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。
<医療機関での受診が必要な状態>
● 高熱が続いている(38度以上)
● 高血糖状態が続いている(350mg/dl以上)
● 嘔吐や下痢などの強い自覚症状がある
● 食事ができない
なぜシックデイルールを守ることが大切なのか、項目ごとにそれぞれ解説していきます。
保温を徹底して安静にする
安静は病気の症状を抑えるための基本です。体を動かすと体内のエネルギーが消費され、同時に病気に対する抵抗力も減少してしまいます。
体力の消耗を防ぎ、抵抗力を保ちながら病気の完治に努めましょう。
また、保温も心がけてください。体を温めてしっかり休むことは体調不良時の対策として欠かせません。寒気を感じるような場合では、なおさらの徹底が必要です。
水分と炭水化物を十分に摂る
体調不良時にはなかなか食欲がわかないものです。しかし、病気の症状を抑え回復に向かうには、体内へのエネルギーや栄養素の取り込みは不可欠です。
食欲がない場合でも食事はしっかりと摂らなければなりません。なかでも大切なのは水分と炭水化物の補給です
脱水状態になると体内の血液濃度が高まり、血糖値上昇の原因になります。また、高血糖であれば本来は血液中の余分な糖分は尿から排出されるものですが、脱水状態では尿の量自体が減少するため、適切に排出されず体内に残ってしまいます。
これも血糖値の上昇につながる要因となります。脱水状態となることを防ぐべく、十分な水分補給が求められます。
一方、糖分が不足し低血糖になった場合では、血液中にケトン体という物質が増加し、血液は酸性へと変わります。
それは吐き気や意識障害といった深刻な問題を引き起こす原因になります。
低血糖にならないための血糖値コントロールの一環として、糖分が多く含まれている炭水化物を摂取するようにしてください。
飲み薬を調整する
糖尿病の薬の調整方法は、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。
・1型糖尿病の場合
食欲が湧かず、まともに食事を食べられない状態であっても、インスリンの投与は欠かさず行うようにしてください。
数時間おきに血糖値を測定し、その結果に合わせてインスリンを数単位ずつ追加していきましょう。
また、この際のインスリンは速効性の高いものを選択してください。この流れを繰り返し、血糖値のバランスを損ねないよう調整することが大切です。
・2型糖尿病の場合
使用する飲み薬によって調整の方法も異なります。例えばビグアナイド薬の場合であれば、脱水によって別の症状が引き起こされるリスクが懸念されるため、服用を控えることになります
DPP-4阻害薬の場合は、食事を摂れない状態であれば薬効自体が見込めなくなります。このように、体調と薬の種類に応じた調整が求められるため、主治医の指示に従うことが大切です。
自己判断でインスリンを中断しない
インスリン注射についても、1型糖尿病と2型糖尿病で異なります。
・1型糖尿病の場合
体内でインスリン分泌が正常に行われていないため、外部からインスリンを投与する必要があります。
これは、シックデイでも変わりありません。インスリンの投与を中断してしまうと、インスリンの欠乏により嘔吐や意識障害など深刻な症状が現れるおそれがあります。
・2型糖尿病の場合
いつも通りに食事を摂れない状態であれば、インスリンの投与量を調整する必要があります。
普段の半分程度食べられる場合であれば通常時と同じ量のインスリンを投与することになりますが、自己判断は禁物です。必ず主治医の指示に従って調整しましょう。
血糖値を測り症状を把握する
シックデイでは血糖値が乱れやすくなるため、数時間おきに血糖値を測定し、自身の状態を正しく把握することが大切です。
普段の状態と比較しながら、病状の把握に努めましょう。
血糖値のほかに体温や体重も自身の状態を確かめるひとつの指標となります。シックデイで体の抵抗力が弱まると、感染症にかかりやすくなります。
感染症には発熱が伴うケースがあるため、まずは体温を測ることから対応してください。
また、体重が普段よりも大幅に減少している場合には、体内の水分量が低下し、脱水状態に陥っていることが懸念されます。
このように、自身の症状を正しく把握することは、医療機関の受診を急ぐべきかの判断材料にもなります。
シックデイのときに避けた方がよい食べ物
シックデイでは食欲不振に陥り、嘔吐や下痢といった症状に悩まされることも少なくありません。
消化のしづらい食べ物や脂肪分の多い食品は体への負担につながるため、できるだけ控えるようにしましょう。
<シックデイのときに避けた方がよい食べ物>
● インスタント食品
● デニッシュパン
● たけのこ
● きのこ類
● 海藻類
● 脂身の多い肉
● 生クリーム
● マヨネーズ
● 青魚
● まぐろ
● セロリ
● にら
また、調理する具材の切り方やかたさなども消化効率に影響します。大きな具材やかたい食べ物は消化までに時間がかかるため、体への負担になりかねません。
食材選びだけでなく調理方法にも気を配りましょう。
シックデイのときに摂った方がよい食べ物
糖尿病治療薬には、食事を摂れない状態の服用では効果が期待できない種類もあるため、適切に食事を摂る必要があります。
シックデイのときにはどのような食べ物を選ぶべきなのか、普段通りに食べられる場合、食欲不振の場合など、ケースごとに紹介します。
<食欲があるときにおすすめの食べ物>
● 麺類(うどん・そばなど)
● シチュー
● おじや
● 果物
<食欲がないときにおすすめの食べ物>
● おかゆ
● 梅干し
● アイスクリーム
● ゼリー
● 茶碗蒸し
また、シックデイでは嘔吐や下痢などの症状から、電解質や水分が体内から奪われてしまいます。脱水症状を防ぐために、次の食べ物を取り入れるようにしましょう。
<脱水予防におすすめの食べ物>
● みそ汁
● 野菜スープ
● スポーツドリンク
● 果汁ジュース
まとめ
シックデイでは血糖値が大きく上下するおそれがあり、嘔吐や吐き気などの症状や低血糖などの合併症も懸念されます。
シックデイルールに従って生活することを心がけましょう。
ルールの細部や具体的な部分については、主治医との相談のうえで決めるようにしてください。
何事も自己判断は禁物です。薬の量の調節なども含め、主治医の指示を遵守しながらシックデイを適切に過ごしましょう。
監修:院長 坂本貞範