食生活の改善は、糖尿病治療の基本となる大切な行動です。それぞれの食品と血糖値には密接な関係があるため、それを理解したうえで健全な食生活を心がけましょう。
こちらでは、糖尿病治療中の食べ物の選び方や食べ方について紹介していきます。
血糖値を上げやすい食品は?
糖尿病の治療中は、血糖値をなるべく一定値に保つように注意しなければなりません。
そこで注目すべきは食事です。血糖値を上昇させる要因はいくつかありますが、中でも食事はその影響が大きく表れます。
とくに甘いものや単純糖質を含む食べ物などは、血糖値を急激に上昇させてしまう要因となります。以下は、血糖値を上げやすい食品の代表例です。
〇主食にあたるもの(ご飯、パン、麺類)
〇餅
〇芋類(ジャガイモやサツマイモなど)
〇とうもろこし
〇栗
〇豆類 ※大豆を除く
〇コーンフレーク
〇お菓子類(ケーキ、まんじゅう、スナック菓子、クッキー、せんべいなど)
〇ジュース
糖尿病治療中に「これを食べてはいけない」といった食事制限は原則ありません。ただし、上記のような食品を口にする場合は頻度・量を調整することが大切です。
糖質の摂り過ぎにつながる要注意な食事のとり方
糖質を摂りすぎないためには、食品を選ぶことだけでなく、食事のとり方にも気を配りましょう。糖尿病治療中における食事のとり方の注意点について紹介してきます。
主食だけの食事が多い
食事は栄養を補充するものであり、満足感を得るためだけに取るわけではありません。
しかし、なかには「とりあえずお米を食べておけば大丈夫」と考える人もいるでしょう。うどんのみ、そばのみ、ラーメンのみ、という食べ方も同様です。
しかし前項のリストでも取り上げたように、主食には多くの糖質が含まれています。そのため、主食に偏った食事では糖質過多となる傾向があり、高血糖の原因になりかねません。
主食だけでなく、主菜・副菜がそろった献立を心がけましょう。
間食が多い
糖尿病治療中であっても間食自体は構いません。しかし、何を食べるのかには注意が必要です。
多量の糖質が含まれる甘いお菓子やジュースを取りすぎると、高血糖の原因になるほか、1日に摂取すべきカロリーを超えてしまう可能性も考えられます。
また、間食はあくまでも次の食事までの“つなぎ”です。量やタイミングについても考慮しなければいけません。とくにタイミングは重要です。
不規則ではなく、決まった時間に間食を取るようにしてください。
<間食で特に控えたほうが良いもの>
〇甘味料(はちみつ含む)
〇お菓子(和洋問わず)
〇せんべい・おかき
〇カップラーメン
〇菓子パン
でんぷん質の多い食品をよく好んで食べる
見落としがちなのが芋類やかぼちゃ、トウモロコシ、栗といった食品です。これらは大量のでんぷん質を含んでいます。
実はこの“でんぷん”も糖質源のひとつとなるため、取りすぎには注意しなければいけません。ちなみに、スナック菓子の主な原料も小麦やとうもろこし、ジャガイモです。
<でんぷん質の多い食品>
〇イモ類
〇かぼちゃ
〇とうもろこし
〇栗
このように、すべてが「糖質 = 甘いもの」というわけではありません。知らず知らずのうちに大量の糖質を摂取していた、ということを避けるためにも、食品に含まれる栄養について理解しておきましょう。
糖尿病食を調理するポイント
糖尿病食を調理する際には、いくつかのポイントを抑えておくことが大切です。食事療法の効果を高めるためにも、以下の点を覚えておきましょう。
まずはすぐにでも実行できる、簡単なことから始めてください。
食物繊維を多めに摂る
野菜や海藻、きのこなどの食品には、多くの食物繊維が含まれています。食物繊維には消化吸収を緩やかにし、血糖値の急上昇を抑える働きがあります。
便秘の改善にも効果があるとされており、糖尿病治療中に積極的に摂りたい成分のひとつです。
また食物繊維には、お腹を膨らませる作用があり、さらに消化までの時間も長くかかるため、空腹を感じるまでの時間を延ばし、間食を防ぐことにもつながります。
なお、一日に摂取しておきたい食物繊維の量の目安は男性で20g、女性で18gです。
また、食物繊維には水溶性と不溶性があり、それらをバランスよく摂ることもポイントのひとつ。
例えば便秘の改善であれば、水溶性は便を柔らかくする働き、不溶性には便のカサを大きくする働きがあり、それぞれをバランスよく摂取することで便秘改善効果が促されるというわけです。
以下に、代表的な食物繊維含有量の多い食品をまとめます。
◆水溶性
〇リンゴ
〇キャベツ
〇大根
〇こんぶ
〇わかめ
〇こんにゃく
◆不溶性
〇穀類
〇ごぼう
〇きくいも
〇よもぎ
〇しそ
〇エリンギ
肉類の余分な脂肪は取り除く
牛肉や豚肉の赤身の摂取は、糖尿病の発症リスクを高めるという研究があります。とはいえ、すべての肉類を食べてはいけないわけではありません。
理想的な肉類としては、鶏の胸肉やささみが挙げられます。また、牛・豚・鶏の肩肉、ヒレ肉も問題ありません。
さらに調理方法を考えることもポイントです。蒸す・茹でる・煮るといった調理は、肉の余分な脂を取り除くことに適しています。
また、焼く場合は網を使うのもポイントです。糖尿病治療中では魚の積極的な摂取が推奨されますが、このような工夫をすれば決められたエネルギー範囲で肉類を取り入れられ献立の幅も広がります。
植物油で調理をする
調理で油を使う際は、サラダ油やオリーブオイルといった植物性油の利用がおすすめです。これらに含まれる油は不飽和性脂肪酸です。
これには血中のLDLコレステロールを上げづらくし、中性脂肪を下げる働きがあります。
一方、赤身肉やラード、バターの脂肪には、動脈硬化を促進するLDLコレステロールを増やしてしまう飽和脂肪酸が含まれています。
飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることで、健康上の大きな恩恵が受けられたというハーバード公衆衛生大学院の研究もあるほどです。
食塩の量を減らす
食塩の摂取量が多くなると、腎臓への負担だけでなく、動脈硬化の悪化につながるともいわれています。
そのため、減塩は高血圧予防に効果的です。厚生労働省で推奨されている一日の摂取量は男性で8g未満、女性で7g未満です。
ただし、合併症や高血圧がある場合は1日6g未満を目指してください。
しかし、減塩によって食事が味気なくなってしまうのは避けたいです。そこで、以下のような工夫をしてみてください。
〇昆布・かつおの出汁を取って料理に生かす
〇香辛料や酸味、香味野菜で味にアクセントをつける
〇醤油やつゆは小皿にとって、つけながら食べるようにする
〇汁物を作る際は具を多め、汁を少なめにする
糖尿病食事療法のための食品交換表を活用する
糖尿病の治療には、日本糖尿病学会の食品交換表が定本として用いられています。
ここには、食品がⅠ~Ⅳ群1~6表と調味料に分類されており、食品の栄養エネルギー80lcalを1単位として示しています。表1~6の分類は以下の通りです。
○表1:穀物、いも、まめ(大豆を除く)、一部の野菜
○表2:くだもの
○表3:魚介、肉、卵、チーズ、大豆とその製品
○表4:牛乳と乳製品
○表5:油脂、多脂性食品
○表6:野菜、海藻、きのこ、こんにゃく
この表が「交換表」と呼ばれているのは、同じ表分類の食品であれば、同じ単位数で取り替えてもいいという考え方でできているからです。
たとえば魚介と肉は表3に入っているので、単位毎に日替わりで食べてもいい、といった考え方です。糖尿病治療中の献立を決める際は、ぜひ活用しましょう。
血糖値を上げにくくする食べ方
食べ方ひとつでも、血糖値には大きな影響を及ぼします。以下では、血糖値を上げにくくする食べ方について紹介していきます。
よく噛んで早食いはしない
早食いをすると、早くインスリンを分泌しようとする膵臓に負担がかかり、血糖値が上がりやすくなります。
こうした症状を避けるためには、口に入れた食品をよく噛んでゆっくり食べることが大切です。また、ゆっくりと食べることは過食を避けることにもつながります。
満腹中枢が働くまでの時間は、食べ始めてから約15分後とされています。最低でも、一度の食事が15分以上になるよう心がけましょう。
1日3食、規則正しく食べ間食は控える
食事は規則性が大切です。朝・昼・晩の3回を、同じ時刻で食べられるよう生活を見直しましょう。
なお、朝と昼を一緒にする“まとめ食い”は厳禁。回数を一定にするのと同じように、食事の量も均等にするのが大切です。なお、間食も原則は避けるようにしてください。
栄養バランスの良い食事量にする
食事の質にも気を遣いましょう。大切なのは、さまざまな食品をまんべんなく食べることです。
そのため、丼物や麺類などの単品料理は避け、主食・主菜・副菜がそろった食事を心がけましょう。
また、ご自身の食事量を把握するために、食品の計量を習慣にすることもおすすめです。
適正なエネルギー量の食事を摂る
人それぞれに、一日に必要となるエネルギー量は異なります。基本的には、主治医から指示を受けた量を守るようにしてください。
なお、一般的なエネルギー量の目安は以下の計算式で求められます。
エネルギー摂取量(kcal)= 身体活動量 ×標準体重(身長m×身長m×22)
なお、上記の身体活動量については以下を目安にしましょう。
〇軽労作:25〜30kcal/kg標準体重
〇普通の労作:30〜35 kcal/kg標準体重
〇重い労作:35〜kcal/kg標準体重
まとめ
食生活の改善は糖尿病治療において、基本となる大切な行動です。今回紹介した内容を踏まえて、適切な食生活を習慣づけるようにしてください。
監修:院長 坂本貞範
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