糖尿病で入院しないといけないレベルとは?治療に必要な知識を知る
糖尿病と診断されたら、治療には入院が必要なのでしょうか。もし入院が必要なら仕事や日常生活への支障などいろいろなことが心配になります。できることなら入院せずに治療したいものですよね。
この記事では、糖尿病と診断された場合には入院しないといけないのか、また糖尿病で入院するケースや、どのような治療を行うのかについて解説します。
医者に勧められたのなら入院すべき?!
糖尿病は、高血糖状態が続く病気です。高血糖状態が続くと血管が障害されるため、放置すると病気が進行し、さまざまな合併症を引き起こします。つまり、糖尿病は自然治癒することはなく、治療を行わなければならないということです。
糖尿病の治療にはさまざまな方法があり、自宅で生活習慣の改善に取り組むことで治療する方法もあります。
ただし入院するレベルの基準として、自宅での治療がうまくいかない場合や合併症が進んだ場合などは、入院による治療を行うこともあります。特に医師が入院を勧めてきた場合は必ず応じることをお勧めします。
入院して糖尿病治療を行うメリットについて以下で詳しく見ていきましょう。
糖尿病治療のための入院をするケース
糖尿病治療のために入院をするケースには以下のようなものがあります。
- 血糖値の管理が不十分である
- 合併症が進行している
- 食事療法が実践できていない など
糖尿病で入院することは、上記のような問題を医師などの専門家と一緒に解決し、病気の進行を抑えて生活の質を維持しながら健康寿命を延ばすことが目的になります。
糖尿病による合併症で入院するケース
すでに糖尿病による合併症を発症している場合は、合併症の治療や悪化を食い止めることが入院の目的になります。
入院することでさまざまな検査を行うことができ、専門家に相談しながら治療を受けられるため、集約治療が可能になります。
▼こちらも併せてご参照ください
糖尿病の三大合併症とは|症状別の病期に現れる異常を知る
糖尿病の教育入院ってなに?
糖尿病の教育入院とは、一般的な治療目的の入院ではなく、病気への理解を深め、正しい食事や生活習慣に対する知識を習得してもらうための入院になります。
教育入院の具体的な目的は以下となります。
- 自身の糖尿病の状態を正しく把握すること
- 糖尿病に関する正しい知識を身に付けること
- 食事、運動の正しい管理方法を身に付けること
糖尿病教育入院にはもちろん入院が必要ですが、これらの知識が身に付くことで結果的に血糖コントロールがうまくいき、糖尿病の改善につながることになります。
糖尿病教育入院の内容
入院期間は病院やプログラム、患者の方の状況によって異なりますが、1~2週間前後のところが多いです。一般的な糖尿病教育入院の流れと内容は以下となります。
診断・治療のための検査を行う
糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんどありません。そのため、さまざまな検査を行うことで現在の糖尿病の状態を把握します。
糖尿病教育入院中の検査には、血糖値の日内変動を見るための採血検査やC-ペプチド蓄尿検査といったものがあります。
・血糖値の日内変動
血糖値は1日のなかでも時間によって変化します。血糖値は食事の量や内容、ストレス、運動などによっても変動することがありますが、特に食事は血糖値に与える影響が大きく、食後1~2時間でピークを迎えたあと元に戻ります。そのため食事ごとに空腹時と食後2時間の血糖値を測り、血糖値の変動を見ていきます。
・C-ペプチド蓄尿検査
食事をするとインスリンというホルモンがすい臓から分泌され、血液中の糖を細胞に取り込みやすくすることで血糖値を下げます。糖尿病はこのインスリンの分泌量が少なかったり、分泌されたインスリンの働きが悪くなることで発症します。C-ペプチドはインスリンが作られる際にできる物質で、インスリンとほとんど同じ割合で生成されます。
C-ペプチドはインスリンと一緒に血液に放出され、尿中に排泄されます。そのため尿のなかのC-ペプチドの量を測定すれば、インスリンの分泌量がわかります。糖尿病患者のインスリン分泌能を調べる際は、24時間蓄尿した尿中のC-ペプチドの量を測定することが一般的です。
現在の状況を把握することでどのような治療が必要になるのか、理解を深めることにつながります。糖尿病が進行する前に教育入院すれば、合併症の発症や進行を食い止めるための知識や方法が身に付き、糖尿病の改善につながります。
糖尿病の知識を学ぶ
糖尿病教育入院では、糖尿病がどういうもので、どういう治療が必要になるかを学んでいきます。
具体的には以下の治療法について学んでいきます。
- 食事療法の知識
- 運動療法の知識
- 薬物療法の知識
それぞれどのような内容を学ぶのか以下で見ていきましょう。
1.食事療法の知識
糖尿病教育入院では糖尿病治療の基本である食事療法について学びます。なぜ食事療法が必要なのか、食事療法とは具体的にどうすれば良いかなど、食事療法の基本を学びます。
具体的には以下の知識を深め、習得していくことになります。
- 食事療法の重要性
- 適正体重を維持すること
- 適正なエネルギーを守った食事を摂ること
- 規則正しい食事を摂ること(適正な食事の時間や食事量、回数など)
- 栄養バランスの良い食事を摂ること など
2.運動療法の知識
糖尿病の治療は食事療法と運動療法を併せて行うことが基本です。
糖尿病の運動療法を行う際は運動の習慣をつけることが大切です。そのため、糖尿病教育入院では、実際にエルゴメーターやトレッドミル(ランニングマシン)などを用いて有酸素運動を行い、身体状態や血糖値の変化を見てもらうことで、運動による血糖コントロールの効果を感じてもらいます。同時に、どの程度の負荷や運動強度が患者にとって適正かも判断していきます。
3.薬物療法の知識
糖尿病の治療は食事療法と運動療法が基本ですが、それでも血糖コントロールがうまくいかない場合は薬物療法を取り入れることになります。糖尿病の治療薬は、大きくわけると経口血糖降下薬とインスリン注射があります。
経口血糖降下薬にはインスリンの働きを改善する薬やインスリンの分泌を促進するもの、糖の吸収と排泄を調節するものなど、さまざまな種類があり、患者の状況に応じてどの薬をどのタイミングで服用するかが変わります。糖尿病教育入院では、それぞれの薬にどういう効果があり、どのような副作用があるのかをしっかりと理解してもらうことになります
一方、インスリン注射は体の外からインスリンを補充する方法で、インスリンが作用する時間によって超速効型・速効型・中間型・混合型・持効型にわかれます。糖尿病教育入院では、まずインスリンはいつ分泌され、どのように作用するのが正常なのかを理解したうえで、インスリン治療薬をどのように扱えば良いかを習得します。
生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病の場合は経口血糖降下薬から始め、それでも効果が出ない場合はインスリン注射へと進むことが一般的です。一方、1型糖尿病はインスリンをほとんど分泌できないため、インスリン注射が第一選択となります。
まとめ・糖尿病は場合によって入院も必要
糖尿病は入院せずに治療することもできます。しかし、患者の状況や医師の指示がある場合は入院して治療を行うことが必須です。
また、病院によっては糖尿病教育入院を実施しているところもあります。1~2週間の短期的な入院によって、糖尿病や治療に対する知識を深める目的で実施します。
「1~2週間でも入院するのはつらい」と思うかもしれませんが、自宅での治療が困難になったり合併症を発症してしまうと、入院による治療を余儀なくされる可能性もあります。また、結果的に治療が長引くケースもあります。
早めに医師の判断を仰ぐなど、専門家に相談しながら正しい治療を行いましょう。
監修:医師 坂本貞範
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