糖尿病による便秘は合併症が原因|神経障害の関係性と症状

2021.08.20

カテゴリー: 糖尿病

糖尿病患者の方は便秘になる人が多いのですが、これは糖尿病の合併症で神経障害を引き起こし、神経によってコントロールされている腸などの消化器に悪影響が及ぶためです。

本記事では糖尿病と神経の関係から便秘になる原因について解説します。また便秘の改善が期待できる、糖尿病患者の方のためのセルフケアも併せて紹介します。

糖尿病で便秘になる原因

糖尿病患者の方が便秘を引き起こしやすいのは、腸などの消化器系のすべてが糖尿病の影響を受けているためです。また消化器系の機能障害は、糖尿病からだけではなく、合併症から起こることも多いです。便秘以外に消化器の不具合で生じる症状は次のとおりです。

・便秘
・下痢
・腹痛
・嘔吐
・便失禁

これらの消化器系の異常は互いの症状に影響しあっている場合があります。例えば、便秘になると腸の内容物(便そのもの)が腐敗して有害物質がつくられ、それが腹痛や嘔吐などを引き起こすことがあります。

糖尿病の合併症のひとつに糖尿病神経障害があり、これは自律神経を含む神経に支障が出る病気です。糖尿病神経障害で自律神経が障害されると、自律神経がコントロールしている、排便に不具合が生じます。

すなわち糖尿病を発症すると、「糖尿病→糖尿病神経障害→自律神経の障害→排便コントロールの不具合→便秘などの症状」という流れで便秘が引き起こります。

糖尿病神経障害の症状

糖尿病神経障害は便秘や下痢だけでなく、さまざまな症状を起こします。主な症状は次のとおりです。

・胃の不調
・手足のしびれ
・立ちくらみ
・熱さや痛みが感じにくくなる
・排尿障害
・勃起障害
・眼やまぶたが動かしにくくなる

糖尿病神経障害は、進行すると手足にしびれや痛みを感じます。さらに進行すると、感覚がなくなるので怪我をしても気づくことができません。

気がつかないうちに、怪我の傷から感染症にかかり、足の組織細胞の壊疽(えそ)を引き起こします。最終的には足を切断する事態に陥ることもあります。

神経障害の予防治療

糖尿病が糖尿病神経障害を引き起こすのは、高血糖の状態が長く続くことによって神経細胞が変化してしまうからです。また糖尿病は動脈硬化を引き起こすことがあり、血流不足から神経細胞に栄養が届かず神経が破壊されることもあります。

糖尿病神経障害を予防するには、以下のような生活習慣の改善が重要です。

・血糖コントロール
・高血圧改善
・脂質異常の改善
・禁煙
・禁酒・節酒をこころがける

糖尿病治療のため投薬している場合は、必然として糖尿病神経障害の予防になっています。その場合も、生活習慣の改善が基本になります。

糖尿病による便秘の改善方法

糖尿病による便秘は合併症が原因|神経障害の関係性と症状

糖尿病による便秘の改善方法を紹介します。便秘は食事と深く関わっています。したがって糖尿病患者の方は、食事法を改善する必要があります。

便秘改善のためのキーワードは「水」「食物繊維」「時間」「排便習慣」です。

水と食物繊維を多く摂取する

快適な排便のためにはバランスのとれた食事が大切です。

とくに気をつけるべきなのは、食物繊維が多い食材をたくさん摂ることと、小まめな水分補給です。まず食物繊維を摂取すると便が大きくなるので排便しやすくなります。

食物繊維の1日の目標摂取量は20~25グラムです。食物繊維が多く含まれている食材は次のとおりです。

・穀類
・根菜類
・緑黄色野菜
・豆類
・海藻類
・イモ類
・キノコ類

食物繊維を多く含有している食材を食べたときは、水分を十分摂ってください。そうすることで腸の動き「蠕動(ぜんどう)」が活発になり、食べたものが腸のなかをスムーズに流れて、便秘の解消につながります。

食事を取る時間は規則正しく

1日3食しっかり食べる規則正しい食生活は、糖尿病による便秘を改善するうえで大切です。

不規則な食生活で問題になるのが、朝食を食べないケースです。排便のリズムは生活のリズムに深く関係しているので、朝食を欠食すると生活のリズムが崩れ便秘などの排便障害を起こしやすいです。

排便の習慣をつける

糖尿病による便秘を改善するうえで、排便習慣を身につけることは重要です。

そのために、次のことを意識するようにしてください。

・我慢しない(便意を催したら速やかにトイレに行く)
・排便のタイミングに合わせて起床時間や食事の時間を変える

便意は食べ物が胃に流れる刺激で腸が蠕動して(活発に動いて)起きます。したがって食事をした後に便意を催しているにも関わらず排便を我慢してしまうと、蠕動が弱まってしまい、しばらく便意が起きないことがあります。

例えば、出勤直前に起床して朝食を短時間で摂り、すぐに交通機関に乗って長時間トイレに行けず我慢する状態が続くと、便秘を誘発します。

神経障害以外の合併症

糖尿病による便秘は合併症が原因|神経障害の関係性と症状

糖尿病による重大な合併症は糖尿病神経障害だけではありません。その他に糖尿病網膜症と糖尿病腎症などがあり、この3つは糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は糖尿病によって引き起こる目の病気です。高血糖が続くと毛細血管が障害されて、網膜に走っている毛細血管も破壊されます。網膜は視力に深く関与しているので、糖尿病網膜症が進行すると最悪、失明してしまいます。

糖尿病腎症

糖尿病腎症は糖尿病によって起きる腎臓の病気です。腎臓にも毛細血管がたくさんあるので、高血糖によってそれらが壊されてしまい発症します。

腎臓は一度壊れると回復することはありません。糖尿病腎症が進行すると腎不全に進んでしまいます。そうすると、腎不全に陥り人工透析が必要になるので、早期発見と早期治療に取り掛かってください。

もちろん、糖尿病神経障害や糖尿病網膜症も、早期発見・早期治療が重要です。

まとめ

糖尿病患者の方が便秘になりやすいのは、神経障害から消化器系に異常が起こるからと考えられています。

糖尿病の合併症のひとつである糖尿病神経障害は便秘を引き起こすだけでなく、胃の不調、手足のしびれ、排尿、勃起不全などにも悪影響を与えます。それは神経が全身の臓器や器官や組織をコントロールしているからです。

「便秘ぐらい」と、症状を我慢するのではなく、医者に相談したり、予防策を参考に便秘改善に取り組んでみてください。

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