糖尿病と診断された方のなかには腰痛に悩まされているという人も少なくありません。では、なぜ糖尿病が原因で腰痛が起こることはあるのでしょうか。この記事では、糖尿病にともなう腰痛の種類や原因、治療法について解説します。
糖尿病にともなう腰痛
腰痛は日本人の8割以上が経験する病気ですが、実は糖尿病とも深い関わりがあります。
糖尿病にともなう腰痛については以下のようなものがあります。
・糖尿病性神経障害(神経障害性疼痛)
・感染症脊椎炎
・肥満による腰への負担
糖尿病性神経障害(神経障害性疼痛)
糖尿病は高血糖状態が続くことで血管が障害される病気です。特に2型糖尿病は日本の糖尿病患者のうち約9割を占めるといわれており、体質などの遺伝的要因と運動不足や肥満などの生活習慣が組み合わさることで発症するといわれています。
運動不足や肥満は腰に負担をかけるため腰痛を発症しやすくなりますが、糖尿病によって血流が悪くなることも腰痛を引き起こしやすくなります。
一方、糖尿病は初期段階では自覚症状がほとんど見られませんが、進行すると合併症の1つである糖尿病性神経障害を発症するといわれています。
糖尿病性神経障害の代表的な症状は手足のしびれや痛みですが、腰痛を引き起こすこともあります。糖尿病性神経障害で起こる痛みは神経障害性疼痛と呼ばれています。
糖尿病性神経障害は糖尿病と診断されてから10年ほど経過すると糖尿病患者の約半数に症状が出るといわれています。
こちらも併せてご参照ください
痛みの原因は糖尿病にある|糖尿病性神経障害の症状と原因
原因と症状の特徴
糖尿病性神経障害(神経障害性疼痛)の症状には以下のような特徴があります。
・腰痛だけでなく足のしびれをともなう
・日中活動しているときよりも夜間に痛みを感じやすい
・就眠時に布団のなかで痛みを感じやすい
糖尿病性神経障害の原因ははっきりとわかっていませんが、血管が障害されて血流が悪くなり、神経細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなることが原因という説があります。一方、高血糖によって痛みの原因物質であるソルビトールが神経細胞に蓄積することで糖尿病性神経障害を発症するともいわれています。
対策・治療方法
糖尿病性神経障害の治療法や対策としては以下のようなものがあります。
・血糖コントロールや生活習慣の改善
・非ステロイド性消炎鎮痛剤の使用
・三環系抗うつ薬の使用
・プレガバリン(商品名:リリカ)の使用
・デュロキセチン(商品名:サインバルタ)の使用
・アルドース還元酵素阻害薬(エパルレスタット、商品名:キネダック)の使用
糖尿病は高血糖状態が続くことで起こります。そのため、症状が軽い場合は生活習慣の改善や血糖コントロールを行うことで症状を改善していきます。痛みが軽度の場合は鎮痛剤や抗うつ剤を用いて対処します。
発症から日が浅く、中等度以下の痛みの場合はアルドース還元酵素阻害薬を使うことがあります。糖尿病性神経障害の原因の1つとして考えられているソルビトールは、アルドース還元酵素の働きによってブドウ糖から生成されます。
そのため、アルドース還元酵素を阻害することで痛みの原因物質であるソルビトールの生成を抑えることが有効と考えられています。
化膿性脊椎炎
糖尿病を発症すると、細菌に対する抵抗力が落ち、化膿性脊椎炎を起こすことがあります。化膿性脊椎炎は、背骨の変形などではなく、黄色ブドウ球菌などの細菌が背骨に感染することで発症します。
一方、過去に感染した結核菌によって発症するケースもあります。結核菌による感染が原因の場合、化膿性脊椎炎とは症状や発症場所が異なるため結核性脊椎炎といって区別しています。
原因と症状の特徴
化膿性脊椎炎や結核性脊椎炎は抵抗力が低下している人に多く、高齢者や糖尿病、ガンなどの病気を患っている方は特に注意が必要になります。
化膿性脊椎炎はほとんどの場合、黄色ブドウ球菌が背骨に感染することで発症します。特に椎間板に近い部分は細菌が定着しやすく、見つけにくいため原因不明とされるケースが多くあります。
化膿性脊椎炎の症状には以下のようなものがあります。
・高熱
・腰や背中の激痛
・麻痺
対策・治療方法
化膿性脊椎炎を発症した場合の治療法や対策には次のようなものがあります。
・抗生物質による薬物療法
・コルセットなどの装具を使用
・病巣部などを取り除き、自分の骨を移植して固定する
早い段階で化膿性脊椎炎を見つけることができた場合は抗生物質による薬物療法を行うのが基本です。また、局所の安静を保つためにコルセットなどの装具も使用します。一方、すでに骨や椎間板の破壊が進行している場合は手術によって病巣部や膿を取り除き、自分の骨を移植して固定することになります。
肥満による腰への負担
糖尿病に限らず、肥満は上半身が重くなり、腰に負担がかかるため腰痛の原因となります。また肥満は糖尿病の原因の1つですので、肥満と腰痛、糖尿病には関係性があるのです。
原因と症状の特徴
肥満になると歩行や運動などちょっとした動きでもエネルギーを使うため、疲れやすくなり、運動など体を動かすことを避ける傾向があります。また、運動を行わないと年齢とともに筋力が衰えます。
そのため、腰椎(腰の骨)を支える腹筋や背筋が衰えてバランスが悪くなり、上半身を支えられなくなってしまいます。体のバランスが悪くなると姿勢が悪くなったり、無理な姿勢や体勢を取ることが多くなるため腰痛を引き起こしやすくなるのです。
対策・治療方法
肥満によって腰痛が起こっている場合は食生活を改善し、肥満を解消することが腰痛の治療法になります。前述のように肥満は腰痛の原因となるだけでなく糖尿病の原因にもなります。肥満を解消することは腰痛だけでなく糖尿病の改善にもつながります。
まとめ
糖尿病にともなう腰痛の種類や特徴、治療法について説明しました。
糖尿病にともなう腰痛には、肥満や神経障害、化膿性脊椎炎などさまざまな原因が考えられます。糖尿病と診断されてから腰痛に悩まされているという方は、自己判断せず、医師の診察を受けることが大切です。