糖尿病は生活習慣病の一つで、食事や運動習慣が大きく影響します。糖尿病治療には運動も重要ということは皆さんもよく知っていると思います。しかし、糖尿病の方の多くは運動習慣がない方も多く、「運動療法」が一つの山と言えます。途中で止めてしまっては意味がありません。できる限り治療の負担を減らし、効果的に継続してほしいと思います。
どのような運動が糖尿病予防に効果があるのでしょうか?筋力トレーニング(以下、筋トレ)をすると糖尿病予防につながるのでしょうか?運動が重要とわかっていても、運動を継続する自信がないという方も多いと思います。運動を長く継続するにはどうすれば良いのでしょうか?今回はそのような疑問や悩みにお答えします。
糖尿病に「筋トレ」は意味がある?
糖尿病治療の一つである「運動療法」は、大きく分けて2種類の運動を行います。
それは「筋トレ」と「有酸素運動」です。
この2つの運動を組み合わせることが糖尿病治療に効果的とされています。
糖尿病に「筋トレ」がなぜ効果があるのでしょうか?「筋トレ」に関係する「基礎代謝」について説明します。
みなさんは「若い頃はいくら食べても太らなかったのに、年をとると太りやすくなった」と感じたことはありませんか?それには「基礎代謝」が大きく影響します。
人間は身体を動かさなくても、生きるために内臓が働き、体温を維持します。「基礎代謝」とは、人間が生きるために行う生命活動に使われる最低限必要なエネルギー量のことです。「基礎代謝」は年をとるごとに下がります。つまり、年をとるごとに消費するエネルギー量が減り、徐々に太りやすくなるのです。
「基礎代謝」の低下を予防することはできるのでしょうか?ここで重要になるのが「筋トレ」です。「基礎代謝」に使われるエネルギーの中で、最もエネルギーを消費するのが筋肉です。つまり、筋トレによって筋量が増加すると、基礎代謝量が増加します。その結果、1日に消費するエネルギー量が増え、太りづらく、痩せやすくなります。
「筋トレ」を行う部位は、腹筋や背筋、大腿四頭筋(膝を伸ばす筋肉)、腸腰筋(股関節を屈曲させる筋肉)などの身体の軸となる大きな筋肉に行うことが推奨されています。「筋トレ」は糖尿病予防に効果的なだけでなく、膝や腰の痛み、姿勢の改善にも効果がありますので、ぜひ「筋トレ」を行いましょう。
「筋トレ」以外に糖尿病に効果のある運動は?
糖尿病予防に効果のあるもう一つの運動は「有酸素運動」です。
「有酸素運動」とは軽度~中程度の負荷を20分以上継続的に行う運動です。具体的にはウォーキングやョギング、水泳などの運動で、種類は様々です。膝や腰に痛みがある方には水中歩行がお薦めです。水の浮力によって膝や腰の負担を減らすことができます。
「有酸素運動」はなぜ糖尿病に効果的なのでしょうか?「有酸素運動」は酸素を消費し、脂肪を燃焼させます。運動によって筋肉に血流が増加すると、ブドウ糖が細胞に取り込まれます。その結果、インスリンの効果が高くなり、血糖値が下がります。運動を中断した場合、その効果はわずか3日程で失われます。
「有酸素運動」も「筋トレ」と組み合わせて継続し続けることが重要です。
運動の効果的な実施時間と注意点
「有酸素運動」に効果的な実施時間は食後60~90分後です。理由は食事によって上昇した血糖値を効率よく下げるからです。食後すぐの運動は、胃の中で行われている消化活動の妨げになるので避けましょう。
また、食前は血糖値が低く、低血糖発作を起こす場合があります。食前の運動も避けましょう。
運動を行う頻度は、「筋トレ」は週に2~3回、「有酸素運動」は週3回以上が推奨されています。また、「有酸素運動」は1度に20~60分、1週間では150分以上行うことも推奨されています。
合併症や他の病気をお持ちの方は、運動の種類や強度に注意しなければいけない場合があります。事前にかかりつけの医師に相談しましょう。リハビリテーションを受ける機会のある方は、自分の身体に合わせた運動方法を指導してくれますので、相談してみましょう。
運動を長く継続するためのコツ
運動習慣がなかった方は、一人で運動を継続し続けるのはなかなか大変です。家族や友人などを誘い、一緒に行う人を作ることはモチベーションの維持につながります。
「有酸素運動」は様々な種類の運動が含まれますが、楽しんでできるものを選びましょう。自宅やジムでマシンを使い、好きなテレビを見ながら行うのも良いですし、外の景色を楽しみながら行っても良いです。同じ場所で同じことを続けると飽きてしまうこともあるので、様々な種類の運動を組み合わせたり、場所を変えて気分転換を図ることもお薦めです。
毎日の仕事や家事で忙しく、運動の時間がとれない方もいると思います。そのような方でもちょっとした心がけと工夫で日常生活に運動を取り入れることができます。例えば、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を意識的に使用するのも良いですし、通勤で公共交通機関を使用している場合は一つ前の駅で降りて歩くことも良いです。
家事も立派な運動です。掃除機掛けの際にスクワット運動を意識しながら行うと「筋トレ」も一緒に行うことができます。買い物に行く際に歩いたり、いつもと違う少し遠い店に行くことも気分転換につながります。自分の生活に合わせて続けられそうなことを考えてみましょう。
まとめ
糖尿病には「筋トレ」や「有酸素運動」を組み合わせて行うことが効果的です。運動の実施時間帯や頻度を意識して行いましょう。自分の生活に合わせて、できるだけ楽しく続けられるものをぜひ取り入れてみましょう。