糖尿病の検査で行われる血糖値測定。それは初期段階での自覚症状が少ない糖尿病の早期発見につながります。
こちらでは糖尿病と血糖値の関係や、糖尿病と診断される条件など、糖尿病の検査について紹介していきます。
不規則なライフスタイルから糖尿病を懸念されている方は、これから検査を受けるにあたりぜひ参考にしてください。
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血糖値の測定が糖尿病発見のカギになる
血糖値とは、血液中にあるブドウ糖の濃度を示す数値のことです。この血糖値を測定することが、糖尿病の早期発見につながります。
糖尿病は初期段階で目立った自覚症状がない病気です
血糖値と糖尿病の関係
進行するにつれて、尿の量が異常に増える多尿や、尿が出る回数が増える頻尿などの症状が見られるようになります。
しかし、これらの自覚症状が見られる段階では、すでに病気が進行してしまっていると考えられます。
そのため、自覚症状がないうちから血糖値を測定し、糖尿病の早期発見につなげることが大切なのです。
そもそも糖尿病とは、血糖値が慢性的に高くなる「高血糖状態」が続いてしまう病気です。人間が食事をして血液中にブドウ糖が増えると、すい臓からインスリンが分泌されます。
健康であればインスリンが分泌された結果、自然と血糖値は下がっていきますが、インスリンの分泌量が少なかったり、インスリンの働きが悪かったりすると、高血糖の状態が慢性的に続いてしまうのです。
したがって、血糖値を測定することは糖尿病を発見するカギになるといえます。
健康な人の血糖値
血糖値は空腹時で110mg/dl未満、負荷後120分では140mg/dl未満が、健康な状態での正常値です。
それに対して、下記のいずれかの条件を満たすと糖尿病型と診断されます。
〇早朝の空腹時で血糖値が126 mg/dl以上
〇負荷後120分で血糖値が200mg/dl以上
〇75gOGTT2(75g経口ブドウ糖負荷試験)時間値200mg/dl以上
〇HbA1C(JDS値)が6.1%以上 ※HbA1Cは糖化ヘモグロビンの割合のこと
血液検査での血糖値の測定が糖尿病の診断になる
糖尿病の診断は、血液中にブドウ糖(血糖)がどれくらいあるのかを測定する検査によって行われます。しかし、血糖値は食事の影響を受けて数値が変動するため、検査方法にはいくつかの種類があります。
血糖値を測定するそれぞれの検査方法について理解しておきましょう。
随時血糖検査
随時血糖検査とは、食事の時間とは関係なく採血を行い、血糖値を測定する検査のことです。随時血糖値が200mg/dl以上ある方は糖尿病型と判断されます。
この場合は糖尿病が疑われますので、さらに詳しい検査を行います。
随時血糖検査で糖尿病型となり、かつ血液検査でHbA1cの値が6.5%以上である場合には、糖尿病と診断される可能性が濃厚になります。
早朝空腹時血糖検査
早朝空腹時血糖検査は、朝食を食べる前の空腹状態で採血を行い、血糖値を測定する検査のことです。食事を取ることで血糖の血中濃度が変わるため、検査前日から実施まで10時間以上の絶食を行います。
正しい検査結果を知るためにも、この間は水以外の飲食物を口にしない必要があるため、必ず医療機関の指示に従いましょう。
空腹時血糖値が126mg/dl以上ある方は糖尿病型と診断されます。
75g経口ブドウ糖負荷試験
75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)では、ブドウ糖液を飲んだあとに血糖値の測定を行います。なお、検査で使用するブドウ糖液には、ブドウ糖75gを水に溶かしたものか、あるいは相当量のデンプン分解物が用いられます。
まずは検査当日の朝まで10時間以上絶食し、空腹時の血糖値を測定します。その後、ブドウ糖液を飲み、30分・1時間・2時間後にそれぞれ採血を行い、血糖値を測定していきます。
75gOGTTで、2時間後の血糖値が200mg/dl以上ある方は糖尿病型と診断されます。
尿検査による尿糖値の検査も
糖尿病の診断には尿検査が用いられることもあります。血糖値が170~180mg/dlを超えると尿中に糖が出ます。
しかし血糖値が基準値より大きく超えないと尿に糖は排出されないので、尿検査のみでは糖尿病の診断はできません。
早期に発見したい場合には血糖検査が必要です。尿検査はあくまで定期的な検査によって、まだ自覚症状のない糖尿病の患者の方をふるい分けするためのものといえます。
糖尿病だと判断される値は?
糖尿病は検査結果によって「糖尿病型」と「正常型」に分けられます。糖尿病型と判定され、一定の条件を満たした方が糖尿病と診断されます。
糖尿病と診断される条件
糖尿病と診断されるまでには、同日または別日に複数の検査が行われます。まず、検査結果が下記のいずれかに当てはまる場合は糖尿病型と診断されます。
ただし、「糖尿病型=糖尿病」というわけではありません。上記①から③のいずれかと④が確認された場合において糖尿病と診断されるのです。
一度の検査だけで糖尿病と診断されるのではなく、複数回の検査で糖尿病型が確認され、さらに一定の条件を満たすことで糖尿病と診断される流れとなっています。
正常型と診断される条件
糖尿病型に対して正常型と診断される条件もあります。早朝空腹血糖値が110mg/dl未満である場合や、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値が140mg/dl未満である場合には、正常型と診断されます。
ただし、空腹時血糖値が正常であっても、負荷試験を行うと血糖値が高い場合があるため、詳しい検査を行うことが大切です。
特に、空腹時血糖値は正常型であっても食後血糖値が上がる幅が大きい場合には、食後高血糖が疑われます。この場合、気がつかないうちに糖尿病になっていたり、合併症としての動脈硬化などの心配もあります。
健康診断で早朝空腹時血糖値が正常であっても油断は禁物です。
糖尿病型でも正常型でもない境界型とは
糖尿病の検査を行った結果、糖尿病型でも正常型でもない「境界型」と判定されることがあります。
境界型と判定された方は、現状の生活習慣をそのまま続けていると糖尿病やその合併症を引き起こす可能性がある状態にいると考えましょう。
判定後から早めに糖尿病の予防に取り組めば、発症を抑えることができる段階ともいえます。
まとめ
糖尿病の検査方法には空腹時血糖値の測定やブドウ糖負荷試験など複数の方法があり、そこから糖尿病型と分類され、さらに一定の条件が満たされると糖尿病と診断されることになります。
糖尿病は放置することで合併症を引き起こすリスクがあります。初期段階では自覚症状が少ないため、気づきにくい病気です。
自覚症状が見られる段階になるとすでに糖尿病が進行してしまっているため、早期発見のためにも定期的に検査を受けるようにしましょう。
監修:院長 坂本貞範