糖尿病には1型と2型がある!症状の違いと原因を解説

2021.08.19

カテゴリー: 糖尿病

予備軍を含めると有病者は1,000万人を超えるともいわれる糖尿病。そんな糖尿病には、主に「1型」「2型」のふたつの種類が存在します。それぞれの種類の症状と原因のほか、予防法や治療法を紹介していきます。

糖尿病のふたつの種類

主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」のふたつに大別される糖尿病。それぞれに異なる特徴を、以下の図から確認してみましょう。

糖尿病には1型と2型がある!症状の違いと原因を解説

 1型糖尿病

厚生労働省の発表によれば、国内における1型糖尿病の患者数は推定10〜14万人。2型糖尿病と比べて発症率は低く、日本では10万人中、約1.5〜2.5人ほどの割合となっています。ただし、世界全体で見ると、糖尿病患者のおよそ5%が1型糖尿病ともいわれています。

1型糖尿病は、すい臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が何らかの原因によって破壊されることにより、インスリンの分泌が低下もしくは枯渇する症状が特徴です。25歳以下の若年層の症例が多いですが、幅広い年齢で発症する可能性があります。

発症要因に生活習慣も深く関係する2型糖尿病とは、基本的な治療方針も大きく異なります。

1型糖尿病の主な症状

1型糖尿病でもっとも発症頻度の高い、急性発症1型糖尿病では、症状は突然現れるとされており、数日~数週といった短期間に急激に発症します。これはゆっくりと症状が進行し、初期段階では自覚症状が見られない2型糖尿病との大きな違いといえるでしょう。以下、1型糖尿病の主な症状を紹介します。

● 喉の渇き
高血糖状態がキープされ、浸透圧が高くなることで細胞から水分が出て行きます。水分が尿から排泄されることで、体が脱水状態となり、喉の乾きにつながります。

● 多飲・頻尿
高血糖状態によって体が脱水症状に陥ると、排泄の機会が増え頻尿になります。また、自然に喉が渇いくために多飲の傾向も見られ、これによって尿意をもよおす機会が増えることも考えられます。

● 急な体重減少
糖尿病の発症により、食事から取るエネルギーを吸収できない状態になりますが、体はエネルギー源として脂肪や筋肉を分解してエネルギーに変換しようとします。このために、急激な体重減少が起こるケースも見られます。

● 疲労感
糖尿病によりエネルギーが吸収できない状態になると、大きな疲労感を感じることも増えてきます。

● 意識障害
高血糖状態と、ひどい脱水状態の結果、意識障害へとつながることがあります。糖尿病ケトアシドーシス、もしくは高浸透圧高血糖症候群などの急性合併症の可能性が考えられます。

1型糖尿病の原因

1型糖尿病の原因は明確になっているわけではありませんが、大きく分けて、以下のふたつの要因が推測されています。

● 1型糖尿病を発症しやすい体質
● 何らかの原因により、すい臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が破壊される

すい臓のインスリンを出すβ細胞が破壊される現象は、1型糖尿病の特徴的なものです。β細胞が破壊される原因もやはり分かっていませんが、ひとつには自己免疫が関係するともいわれています。

免疫機能が適切に働かないことで、自らの細胞を攻撃するケースがありますが、これがすい臓にダメージを与えているとする説です。

さらにもうひとつの原因として、ウイルス感染が指摘されています。2015年に九州大学の研究グループが、世界で初となる「ウイルス感染により発症するとみられる1型糖尿病のリスクを向上させる遺伝子」を発見したと発表しています。

2型糖尿病

糖尿病には1型と2型がある!症状の違いと原因を解説

2型糖尿病は、日本における糖尿病患者のおよそ95%といわれています。若い段階での発症も多い1型糖尿病に対して、2型糖尿病は40歳以上に多くの症例が見られます。また、1型糖尿病は肥満とは無関係で、比較的痩せ型も多いとされますが、2型糖尿病患者には肥満、または昔肥満だったという方が多いです。

2型糖尿病の原因は、生活習慣や食習慣も含む複数の要因によるインスリン分泌の低下や、インスリンの働きが悪くなること(インスリン抵抗性)にある点が特徴です。

2型糖尿病の主な症状

2型糖尿病は、初期段階では自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな病気です。急激に発症するのではなく、長い期間をかけてゆっくりと進行するため、2型糖尿病ではっきりとした症状が出る頃には、すでに160~180mg/dLを超える血糖値となっているケースが見られます。

慢性的な高血糖により水分の排出が進み、尿が過剰に作られることで、頻尿・多尿や、それにともなう喉の渇き、そして空腹感を感じ始めます。さらに症状が悪化すると、疲労感をはじめとするさまざまな症状が現れます。

2型糖尿病の主な症状は以下となります。

● 疲労感
● 皮膚の乾燥、痒み
● 手足の感覚低下、チクチクとした痛み
● 感染症にかかりやすい
● 頻尿
● 目のかすみ
● 性機能低下
● 傷が治りにくい
● 空腹感
● 喉の渇き

また、糖尿病を数ヶ月〜数年など長い間放置し高血糖状態が維持されると、以下のようなさまざまな合併症の引き金となります。

● 脳梗塞
● 心筋梗塞
● 糖尿病網膜症
● 糖尿病腎症
● 糖尿病神経障害

2型糖尿病の原因

2型糖尿病の原因には、大きく分けて「環境的要因」と家族の「遺伝的要因(体質)」があるとされます。環境的要因とは、生活習慣・食習慣上の要因を指しています。

● 運動不足
運動不足になると糖が消費される機会が少なくなるため、高血糖リスクが高まります。また、運動不足から肥満になると、インスリンが十分に作用しなくなる「インスリン抵抗性」の原因となります。脂肪細胞から分泌される「アディポカイン」というホルモンが、 インスリンの効きを阻害するからです。

● 過食
食べ過ぎによるエネルギーの過剰摂取、糖質や脂質の摂りすぎは、慢性的な高血糖や肥満によるインスリン抵抗性の要因となります。

● ストレス
ストレスを受けることで、血糖値上昇につながる複数のホルモンが分泌されます。

また、遺伝的要因(体質)とは、糖尿病を発症する可能性が高い体質を受け継いでいることを指します。具体的には、父母、兄弟姉妹や親戚に糖尿病の方がいる場合であれば、そうでない方に比べて糖尿病発症リスクが高いと考えられています。

糖尿病の予防・治療方法

糖尿病には1型と2型がある!症状の違いと原因を解説

1型糖尿病と2型糖尿病では、その原因や症状も大きく異なります。そのため、予防・治療方法もそれぞれ別のものとなります。

1型糖尿病ではインスリンの絶対量が不足する状態となり、これはしばしば生命にもかかわります。そのため、インスリンを外部から直接補う治療法が中心となります。一方、2型糖尿病においては、まずは生活習慣の改善が検討されるケースが多いです。

1型糖尿病の予防・治療方法

緩やかにインスリン分泌が低下する「緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病」と呼ばれるタイプを除いて、1型糖尿病の治療では、インスリンを外部から補う治療法が実施されます。インスリンの補充方法については、口からの摂取(経口インスリン)や皮膚からの摂取(経皮パッチ)も研究されていますが、現在の日本では注射以外の方法はありません。

インスリンの補い方は、通常1日を通じて分泌される基礎分泌、食事などで分泌される追加分泌をそれぞれ補う強化インスリン療法を基本とします。適切にインスリンを補えているかをチェックするために、日常的な血糖の自己測定も必要となります。

食事については、標準体重などを考慮して、1日の適正なエネルギー量に設定するなどの食事療法が実施されます。ただし、基本的には食べてはいけないものはなく、厳格に制限されることはありません。

なお、1型糖尿病の原因には不明瞭な部分も多く、明確な予防法はありません。

2型糖尿病の予防・治療方法

2型糖尿病の発症には、生活習慣・食習慣上の要因(環境的要因)も大きく関係すると考えられます。そのため、生活習慣や食習慣の改善が2型糖尿病の予防・治療に有効です。

生活習慣病改善のための運動療法として、有酸素運動を中心に筋力トレーニングを組み合わせることが求められます。初めは軽めに行い、少しずつ運動量を増やしてください。可能であれば毎日の定期的な運動が理想ではありますが、まずは無理なく続けることを目標としましょう。なお、 具体的な有酸素運動には以下のようなものがあります。

● ウォーキング
● ストレッチ
● ジョギング
● サイクリング

また、2型糖尿病の予防・治療には、食事の見直し(食事療法)も重要です。2型糖尿病の予防・治療に効果的な食事のポイントを押さえておきましょう。

● カロリーを取り過ぎない
● 栄養バランスを良くする
● 1日3食規則正しく食べる

なお、運動療法・食事療法を行っても糖尿病の改善が見られない場合には、内服薬やインスリン注射による薬物療法が検討されます。

まとめ

糖尿病には、主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」のふたつのタイプが存在します。それぞれ症状の違いや原因、治療法も異なるため、タイプに応じた治療法が必要です。

国内の発症例の大半を占める2型糖尿病に関しては、普段の生活習慣も症状の予防・治療にかかわります。乱れた食生活や運動不足など生活上の悪習慣に自覚がある場合、または発症が疑われる症状があれば、医師の指導の下で生活改善に取り組みましょう。

糖尿病でお悩みの方は、当クリニックまでご相談ください。

 

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