糖尿病患者が他の病気で手術するときの注意点とリスク

2021.08.19

カテゴリー: 糖尿病

糖尿病患者の方がケガをしたり、糖尿病以外の病気を発症することもあるでしょう。もし、糖尿病患者が他のケガや病気で手術が必要になった場合、手術を受けても良いのでしょうか。この記事では糖尿病患者の方が他の病気やケガで手術をしても問題がないのか、また糖尿病患者の方が手術を受けることになった場合のリスクについて解説します。

糖尿病患者が他の病気で手術するときの注意点

糖尿病患者の方が他の病気やケガで手術をしなければならない場合、以下の点に注意する必要があります。

・医者に糖尿病であることを伝える
・手術前に血糖コントロールをしておく

それぞれ以下で詳しく見ていきましょう。

医者に糖尿病であることを伝える

糖尿病は高血糖状態が続く病気のことです。高血糖状態が続くと、抵抗力が下がり、感染症を引き起こしやすくなります。そのため、糖尿病患者が他の病気やケガで手術をする場合、糖尿病を患っていることをあらかじめ外科医に伝えておくことが大切です。

また、糖尿病の診察をしている担当医師にも「他の病気(ケガ)で手術を受けること」を事前に伝えておきましょう。

手術前に血糖コントロールをしておく

糖尿病患者は抵抗力が低いため、感染症にかかりやすい傾向があります。そのため、血糖値が高い状態で手術を行うと、手術創が治りづらく、感染症にかかりやすくなります。

糖尿病患者の方が手術を受ける場合は、手術する前にしっかりと血糖コントロールを行い、血糖値が落ち着いてから手術を受けるのが基本です。血糖値のコントロールが難しい場合、緊急性の低い手術であれば手術を延期することになります。

インスリンを使用して血糖値をコントロールする場合は2週間程度で正常値に近づきます。手術と糖尿病のどちらの治療を優先するかによりますが、例えば癌の手術であれば、手術日が2週間程度遅れても大きな影響はないといわれています。

なお、手術が可能とされる血糖値の目安は以下です。

・空腹時血糖値…110~130mg/dl
・食後血糖値…140~180mg/dl
・HbA1C…5.8~6.5%

ただし、糖尿病の合併症を発症している場合、発症していない場合と比べて手術の可否判断がより慎重になります。

糖尿病患者が他の病気で手術するときのリスク

糖尿病患者が他の病気で手術するときの注意点とリスク

前述のとおり、糖尿病患者は高血糖状態が続いている状態ですので、抵抗力が低下し、感染症を起こしたり手術創が化膿しやすくなります。

糖尿病患者の方が他の病気で手術を受ける場合に起こるリスクは主に以下の3つになります。

・手術後の血糖値の変化
・傷の化膿、治りが遅い
・手術後の感染症の発症

それぞれの項目について以下で詳しく見ていきます。

手術後の血糖値の変化

健康な人であっても外科手術を受けると交感神経が活発になります。交感神経が活発になると、成長ホルモンやコルチゾール、グルコガンといった抗インスリン作用やインスリン抵抗性を高める働きのあるホルモンが放出されます。したがって、外科手術を受けるとインスリン抵抗性が高くなり、高血糖状態になります。

ですから、糖尿病患者の方が手術を受ける場合は血糖コントロールをいつもより慎重に行う必要があります。糖尿病患者で血糖コントロールができていない場合は、手術創が治りにくく、傷が化膿したり感染症を発症しやすく、重症化することもあります。

傷の化膿や治りが遅い

高血糖状態が続くと血管が障害されます。つまり糖尿病とは血管に炎症が起こる病気です。

外科的手術を行うと、以下のように創傷治癒の過程を経て傷が治ります。

①出血が止まる
②炎症反応が起こる
③新しい毛細血管ができる(血管新生)
④繊維芽細胞の増殖(肉芽形成)
⑤再上皮化

このように、創傷治癒の過程では新しく血管ができることで傷が治ります。外科的手術はこの創傷治癒があることを前提として行われます。

しかし、糖尿病は血管が炎症を起こす病気ですので、新しい血管ができません。そのため、手術創の治りが遅くなったり、傷が治らないことで患部が化膿してしまうことがあります。特に膝から下は血管が詰まりやすく血流が悪くなることが多いため、手術創の治りが遅く、化膿しやすい傾向があります。手術の場所によっては足を切断するということもあります。

手術後の感染症の発症

高血糖状態が続くと殺菌能の低下など、白血球の働きや免疫機能が低下します。そのため、手術後はさまざまな感染症にかかりやすくなります。手術後の感染症を防ぐためにも手術前にしっかりと血糖コントロールをしておくことが重要です。

まとめ

糖尿病患者の方が糖尿病以外の病気で手術を受ける際のリスクや注意点について解説しました。糖尿病患者の方は抵抗力が低く、感染症にかかりやすいため、手術を受ける際は血糖コントロールをしっかりと行う必要があります。

また、手術を受ける際はあらかじめ手術担当の医師に糖尿病であることを伝え、糖尿病の担当医師にも手術を受けることを連絡する必要があります。

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