糖尿病と診断されてから不安や憂鬱な気持ちが続く…これってうつ病?
糖尿病治療を続けていると精神的に不安定になることがあります。一見、糖尿病とうつは関係がないように思えますが、実は糖尿病患者はうつ病になりやすいといわれています。
この記事では糖尿病によってうつ病を発症しやすくなる理由や改善方法について説明します。
うつ病とは
うつ病は心の病といわれていますが、糖尿病とも深い関わりがあります。うつ病の特徴と原因について見ていきます。
うつ病の特徴と原因
うつ病は生活環境やものの考え方、日常生活で生じたストレスなどが組み合わさることで発症するといわれています。必ずしも悲しい出来事だけでうつ病を発症するわけではなく、明るい出来事がきっかけで発症するケースもあります。
例えば結婚や昇進といったイベントは周りからすると喜ばしいことに思えますよね。しかし、こういった環境の変化はその人の捉え方によって不安やストレスになることもありますよね。このように、どのような環境の変化であっても人によってはストレスとなることがあるのです。
一方、脳内ではさまざまな神経伝達物質が働くことで情報伝達が行われています。
これらの神経伝達物質のなかでも特にノルアドレナリンやセロトニン、ドパミンの3種類のモノアミンと呼ばれる物質がうつ病治療において重要であるといわれています。
うつ病は過労やストレスなどによってこれらのモノアミンが減少することで発症すると考えられています。
うつ病の症状
うつ病は精神的な症状だけでなく、肉体的な症状が現れることもあります。
精神的な症状
うつ病の精神的な症状には以下のようなものがあります。
・抑うつ気分
・不安
・焦り
・興味または喜びの喪失
・意欲の低下
・自分を責める など
肉体的な症状
うつ病の肉体的な症状には以下のようなものがあります。
・睡眠障害
・食欲の減退
・疲労感・倦怠感
・動悸
・口が渇く など
糖尿病患者はうつ病になりやすい
糖尿病患者はうつ病を発症しやすいといわれています。糖尿病を発症するとなぜうつ病になりやすいか、またうつ病と糖尿病にどういう関係性があるのかを見ていきます。
糖尿病患者がうつ病になる原因
これまで、糖尿病患者がうつ病になりやすいのは以下のようなことが原因と考えられてきました。
・糖尿病と診断されること
・治療のため、これまでの生活習慣を変えなければならない
・インスリン治療が苦痛
・合併症の発症・進行などに伴う苦痛
しかし、最近は上記以外にも糖尿病とうつ病にはさまざまな因子が関係しているともいわれています。これについては次項で説明します。
糖尿病とうつ病の関連性
うつ病は生活環境や物事に対する考え方、日常生活で生じたストレスなどが組み合わさることで発症するといわれています。
糖尿病患者の方は、上記のような日常的なストレスだけでなく、「糖尿病と診断されたこと」や糖尿病治療(血糖コントロール)に伴う精神的なストレス、さらに血糖値を上げるホルモンの分泌量が増えることでうつ病を発症しやすくなるといわれています。
さらに、うつ病と糖尿病はどちらもストレスが発症原因になるという共通項があります。また、うつ病の人は夜食や間食が多く、運動不足であることが多いということもわかっています。
このようにうつ病患者と糖尿病患者には生活習慣に共通した項目が多いこともわかっています。糖尿病患者の方がうつ病になると何が問題になるのでしょうか。
うつ病は肉体的な症状が出ることがあります。例えば、うつ病を発症すると自律神経やホルモン分泌などさまざまな機能に影響が出ることがあります。
糖尿病はインスリンという血糖値を下げるホルモンの作用不足で起こるといわれています。したがって、うつ病によってホルモン分泌に影響が生じるとインスリンの作用不足が生じることがあるのです。
また、うつ病は集中力や意欲が低下することがあります。そのため、医師の指示通りに服薬したり、通院を続けることが難しくなり、治療が難しくなることがあるのです。
糖尿病患者のうつ病の改善・予防方法
糖尿病患者がうつ病を発症した場合、うつ病の治療と糖尿病治療を併せて行うことになります。
糖尿病治療は自己管理が必要なうえ、ストレスを抱えやすくなります。一方、うつ病のようにメンタル面に問題を抱えていると糖尿病を悪化させる原因になります。したがって、うつ病と糖尿病は同時に治療を進めていく必要があるのです。
糖尿病患者がうつ病を発症した場合、精神科や心療内科での抗うつ剤による投薬治療や認知行動療法などの心理学的なアプローチによる治療、あるいはその両方を併用した治療を行います。
糖尿病患者の方のなかには「精神科を受診するのはハードルが高い」と感じている人も少なくありません。
しかし、精神的に健康であることは糖尿病にとっても重要です。そのため医師の指示に従い、適切に受診することが大切になります。
さらに、糖尿病の治療は食事や投薬などの自己管理が非常に重要になります。しかし、うつ病を患っていると自己管理がうまくできないことがあります。
自己管理がうまくできなくなると、自分を責めてしまい、うつ病が悪化する悪循環を招く可能性もあります。
このようなケースでは、家族や周囲の協力を得ることで、血糖コントロールがうまくいくだけでなく、患者の方も精神的に楽になります。
家族や身近な人に糖尿病患者の方がいる場合、糖尿病やうつ病に対してネガティブな情報ばかりを提供したり、暗い顔で接するようなことは絶対にやめましょう。
いつもと変わらない態度で前向きに治療に取り組むことがうつ病の発症を予防し、糖尿病の改善にもつながります。
まとめ
糖尿病とうつ病の関係性や改善方法について説明しました。
糖尿病患者の方はうつ病を発症しやすい傾向があります。しかし、不安や悩みを1人で抱え込まず、周りの協力を得ながら前向きに治療に取り組むことがうつ病を予防し、糖尿病の治療にもつながります。
糖尿病を治療するにあたって悩みがある場合は医師に相談するのもその1つです。わからないことや不安なことがあればすぐに医師の診察を受けることが大切です。
監修:院長 坂本貞範