1型糖尿病の食事では、栄養バランスの取れた食事を規則正しく取ることを意識していれば特別な制限はありません。
ただし、普段の生活のなかで注意しておきたいポイントもあるので、それら概要を紹介していきます。
1型糖尿病とはどのような病気?
1型糖尿病は、すい臓でインスリンを分泌する「β細胞」が破壊されてしまうことで起こる病気です。
β細胞が壊れると、インスリンの分泌が弱まったり、ほとんど出なくなったりします。
体内でインスリンが不足すると、血糖値が高い状態が続いてしまうため、高血糖を原因とする腎臓や眼の病気をはじめとした合併症を発症するおそれがあるのです。
世界中の糖尿病患者のうち、1型糖尿病の患者は約5%といわれています。発症するのは若年層が中心ですが、幅広い年齢で発症する可能性がある病気です。
日本国内には、生活習慣などの要因で発症する2型糖尿病の患者の方が多くいますが、1型糖尿病は2型糖尿病とは原因がまったく異なるほか、治療法も大きく異なるのが特徴です。
1型糖尿病の治療にはインスリン製剤が用いられます。
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1型糖尿病の原因
1型糖尿病は、すい臓にあるβ細胞が破壊されることに起因して起こる病気ですが、β細胞が破壊されてしまう原因について詳しいことはまだ明らかになっていません。
現在考えられているのは、免疫反応に異常が生じ、自分の細胞を攻撃してしまうことです。これを自己免疫といい、血液検査で確認できます。
自己免疫が起こっているかどうかの検査(自己抗体の検査)は1型糖尿病の診断で用いられています。
1型糖尿病の種類
1型糖尿病にかかるとβ細胞が破壊されます。一般的にβ細胞の破壊は進行性であることから、患者の方は病気の進行とともに体内でインスリンをほとんど出せない状態になってしまいます。
1型糖尿病の治療でインスリン注射が必要となるのはそのためです。病気が進行すると、インスリン製剤によってインスリンを補い続ける「インスリン依存状態」となります。
1型糖尿病の進行のスピードは、劇症・急性発症・緩徐進行の3種類に分けられます。1型糖尿病の種類について、それぞれ見ていきましょう。
劇症1型糖尿病
劇症1型糖尿病は、1型糖尿病のなかでもっとも急激に発症するものです。7日前後でインスリン依存状態になることから、すみやかにインスリンを補う必要があります。
早期にインスリンを補うことができなければ重症化するおそれもあるため注意が必要です。また、急激にインスリンが不足すると「糖尿病ケトアシドーシス」が生じるおそれもあります。
これは、インスリン不足から血糖上昇が起こり、極度の脱水状態に陥ってしまう症状であり、悪化すると昏睡状態に陥る危険性があります。
劇症1型糖尿病の早期対処のためにも、医療機関での診断をできるだけ早めに受けることが大切です。
急性発症1型糖尿病
急性発症1型糖尿病はもっとも発症頻度が多く、1型糖尿病の典型的なものです。この場合、糖尿病の症状が出てから数カ月でインスリン依存状態となってしまいます。
急性発症1型糖尿病は医療機関の血液検査によって発見されることが多くあります。急性発症1型糖尿病では、体内に残っていたインスリンが一時的に効果を発揮することで高血糖の症状が改善する患者の方もいます。
これを「ハネムーン期」と呼びます。しかし、その後、インスリン不足の状態になるためインスリン製剤にて治療を行います。
緩徐進行1型糖尿病
緩徐進行1型糖尿病は時間をかけて少しずつインスリンの分泌が弱まっていくのが特徴です。
インスリン分泌が弱まるまでには短い方で半年、長い方であれば数年かかります。初期段階であれば、インスリン製剤による治療を行うことなく血糖値を抑えることも可能です。
緩徐進行1型糖尿病は、血液検査によって自己免疫が起こっている(自己抗体がある)ことから発見されることがあります。
こちらのタイプでは、すい臓への負担を避けるためにインスリンを補う治療が行われます。
1型糖尿病の治療方法
1型糖尿病の治療では、血糖コントロールを続けることで高血糖を防ぎ、糖尿病の進行や合併症を予防することが大切です。
インスリンを補い適切な治療を行えば、健康的な日常生活を送ることができるため、医師の指示にしたがった治療方法を継続してきましょう。
注射によるインスリン治療
基本的には注射によってインスリンを補う、インスリン治療が行われます。インスリンがほとんど出なくなってしまっているため、インスリン製剤によって補う必要があるのです。
インスリン注射の量は、患者の方の状態に合わせて決められています。
インスリンの量が多すぎると低血糖を引き起こすおそれがあるため、低血糖の症状についても理解し対処できるようにしておくことが大切です。
食事制限はない
糖尿病の食事制限については型によって違いがあります。2型糖尿病では食事療法は欠かせません。そのため、人によっては食事制限を受けることもあります。
一方、1型糖尿病は、そもそもすい臓からインスリンがほとんど分泌されていない状態ですので、インスリンの補充は注射に頼ることになります。
そのため、1型糖尿病の場合には食事制限が不要となります。
1型・2型ともに「食べてはいけないもの」はなく、どのような食材であっても口にして問題ありません。
ただし、「制限」がないだけで、まったくの自由というわけではありません。暴飲暴食や不規則な食事をしていては、弱っているすい臓に過剰な負担をかける可能性があります。
そのため、栄養バランスを考慮しつつ、1日3食の規則正しい食事を心がけることが大切です。
また、糖質の管理も大切となります。食事による糖質コントロールの結果、1型糖尿病患者の方もインスリン注射の量を減らすことができ、注射量を減らすことで血糖値コントロールをしやすくなるメリットがあります。
特に1型糖尿病は血糖値が乱高下しがちですので、糖質量を管理することは、その予防においても効果的です。
血糖コントロールをする「カーボカウント」
糖尿病における食事療法のひとつにカーボカウントがあります。これは、一回の食事における炭水化物(=カーボハイドレート)の量を計算し、血糖値をコントロールする方法です。
炭水化物量が把握できれば、急激な血糖値の上昇を抑えられ、インスリン量も調整できるようになります。
糖質制限と聞くと、一切主食を取らないなど極端なものを思い浮かべるかもしれませんが、カーボカウントを用いて食事を管理していけば食事の自由度は広がります。
また、肥満の予防にもつながります。
1型糖尿病の治療の注意点
1型糖尿病は長期にわたる継続的な治療が必要です。そのため、治療中にさまざまなトラブルやリスクに見舞われることがあります。
特に注意しておきたいのが、インスリン過剰による低血糖や低血糖による失神、シックデイ中の血糖コントロールです。
低血糖が起こってしまった場合の対処法
低血糖が疑われる場合はブドウ糖など血糖値を早く上げてくれる食品を取りましょう。
また、食事があまり取れなかったときや長い運動を控えているような場合は、あらかじめ食べ慣れている食品を少しだけ捕食しておきます。
なお、低血糖により意識がなくなってしまう場合に備え、ブドウ糖や砂糖などをカバンに入れておきましょう。
低血糖が起こった場合でも少しは意識があるなら、周囲の人がブドウ糖などを飲ませることですぐに意識は戻ります。なお、甘いジュースなどでも代用は可能です。
近しい人たちには上記のことをあらかじめ伝えておきましょう。
シックデイで食事ができないときのインスリン注射は?
糖尿病治療中に風邪をひいてしまったり、発熱や下痢、腹痛などに見舞われ食欲がなくなってしまう局面をシックデイと呼びます。
ここで注意したいのは、「インスリン注射を自己判断で中断しない」ということです。
1型糖尿病の場合は体内でインスリンがほとんど分泌されていないため、それを補うためにインスリン注射が必要です。
そのため、食事ができていなくても基礎分泌のインスリン注射は投与量を変更してはいけません。ただし、食事ができない状況では血糖値などにも影響が出てきます。
この調整は食事量や血糖値に合わせて、追加分泌の即効型インスリンの量で整えるようにしてください。
まとめ
1型糖尿病の場合では2型糖尿病と比べて厳しい食事制限などはありません。ただし、普段の生活のなかでは、規則正しく食事を取り、糖質量を把握することなどが求められます。
なお、糖尿病は自覚症状としてなかなか気づけない反面、早めの発見が大切です。心当たりの有無にかかわらず、定期的に医療機関での検査を受けるようにしましょう。
監修:院長 坂本貞範
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